一気に32nmプロセス化
レガシーの排除も進むIntel 8シリーズ
次はいよいよIntel 8シリーズである。コード名は「Lynx Point」。7シリーズと同様に個人向けのトップエンドが「Intel Z87」、その下に「Intel Z85」と「Intel H85」が用意される。ビジネス向けには「Intel Q87」がトップエンドとなり、「Intel Q85」「Intel B85」がその下に用意されるものほぼ同じである。
この8シリーズでは、久しぶりにチップセットも製造プロセスが大きく変化する。Intel 5シリーズからIntel 7シリーズまでは、ずっと65nmプロセスを利用しての製造だったが、8シリーズからは45nmプロセスを飛ばして、いきなり32nmプロセスでの製造に切り替わる。この結果として、まずUSB 3.0のポート数が6ないし8ポートに増えるほか、SATAがすべて6Gbps対応になる。もっとも、この世代での目立った変更はこの程度である。
DMIの8Gbps化は、次の世代(Intel 9シリーズ)に持ち越しになったようだ。技術的には32nmプロセスならば、PCI Express 3.0(Gen3)のPHYが動く見込みは高いらしいが、一足飛びに実装して「駄目でした」ということがないように、まずは既存のGen2世代のままで確実に動く製品を、ということらしい。加えて言えば、CPU側に接続されるGPUに関してはGen3への移行が進みつつあるが、PCH側に接続される周辺機器に関してはいまだにGen2はおろかGen1対応の製品も少なくないため、Gen3を急いで実装してもあまりメリットがないから、という事情もあるようだ。
ただし、SATAがすべて6Gbpsになるから、6ポートだと36Gbpsという計算になり、これを5Gbps×4のDMIで受け止めるのはちょっと辛い。Gen3相当の8Gbpsに引き上げると、SATAが600MB/秒×6=3.6GB/秒、DMIが1GB/秒×4=4GB/秒ということになり、一応帯域はマッチする。Intel 9シリーズでは、この方向に進むのは間違いないと思われる。
目立たないところでは、8シリーズではPCIのオプションが消えるようだ。これはようするにプロセスを微細化したことで、3.3Vという「高い」電圧の駆動がだんだん難しくなってきたことと、ビジネスユーザー向けであってもPCIのニーズが減ってきたことの両方が背景にある。実際、例えばIntel Z77を搭載しながらPCIにも対応したマザーボードは、PCI Express/PCIブリッジをマザーボード上に実装して、ここからPCIを引っ張り出している。もしPCIがまだ必要といったケースでは、こうしたブリッジチップを搭載することで、解決できると考えているようだ。
また、LPC(Low Pin Count)インターフェースも、8シリーズの世代で消えそうである。もともとLPCはISAバスの代替として登場したもので、Super I/Oやフラッシュメモリー(ストレージ用ではなくBIOS用)の接続に利用されていたが、昨今ではSuper I/O自体がレガシーI/O扱いされていて、本当にごく一部の用途でしか利用されていない。フラッシュメモリーのインターフェースは「Serial SPI」と呼ばれる1線式のものにほぼ切り替わっているから、LPCそのものの存在価値がかなり問われている状況である。
一部のレガシーI/Oに関してはPCI接続の代替品があるので、PCI Express→PCI Express/PCI Bridgeを経由してPCI Super I/Oという形での接続で代替することになりそうだ。しかし、これに関してはまだ確定していないということで、ロードマップ図では「LPC?」と記載している。あるいはいきなり削除するのではなく、一応ピンは残しつつ「Not Recommended」(利用を推奨しない)という形で、移行を進めるのかもしれない。
そのほかに細かいところでは、Intel RSTがもう少し細かく設定できるようになるという話も出てきている。その一方で、より高速なストレージ用インターフェース「SATA Express」のサポートに関しては、今のところ一切聞こえてきていない。これも9シリーズへ持ち越しになるのかもしれない。
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