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Microsoftが若きエンジニアをサポートする理由 第3回

ソーシャルメディアを超えるブレインメディアとは!?

「vingow」でマスメディアの主役交代を狙う──JX通信社米重氏

2012年06月04日 11時00分更新

文● タトラエディット、語り●米重 克洋、遠藤 諭、写真●神田 喜和

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ホントは航空業界を目指してます!

遠藤 「vingowは出来てから間もないですよね。開発や展開には今がいい時期だったと?」

米重 「はい。インターネットのサービス基盤が充実していますよね。そういう面でタイミングがよかった。じつは、このサービスの構想の手前にあった仮想通信社事業のアイデアを練り始めた2006年には、技術面でも費用面でも、とてつもないコストが必要だったと思います。それが今なら簡単にできる。クラウドの世の中ですからね。vingowはもともとはAmazonのEC2からはじめて、ひととおりのサーバーを使ってやってみました。それを徐々にWindows Azure™ に移しています」

遠藤 「経営者としてみると、やっぱりコスト面での折り合いがよかったの?」

米重 「そういう理由もありますが、エンジニアの意見が大きかったです。最初Windows Azure™ を候補に挙げたとき、エンジニアにとっては『使いにくいんじゃないの?』という先入観があったようです。でも実際に他のサービスと比べてみると、GUIで操作がしやすいし、日々の運用がしやすくなるような配慮がされていた。日本マイクロソフトさんのサポートがあったというのもポイントでしたね。

 社内議論の結果、エンジニアにとって使いやすいものがいいだろうということで、Windows Azure™ に落ち着きました。さらに、年間32万円相当のクラウド環境も利用できるというので。いくらクラウドといっても馬鹿にならない金額がかかる。このコストが減らせるのはいいですね。vingowは他のサービスにくらべてもデータの流通量が多いので。1日2万件の記事を解析処理するのは大変なんです」

遠藤 「そんなに多いんだ?」

米重 「はい。それに、開発初期、60人くらいでアクセスすると、サーバーが落ちてしまいました。それくらいの大きな負荷がかかるんですね。その負荷をいかに小さくするかが最初の課題でした。日本マイクロソフトの方とディスカッションさせていただいて、ここはこうした方がいいとか、こんなやり方があるとか、ほんとうに様々なアドバイスをいただいたんです。そのサポートとWindows Azure™ がかみ合ってサービスが成り立っています」

遠藤 「FacebookとMyspaceの違いの話がありますね。Facebookは、システム的にラクをしているんですよ。一見同じだけど、Facebookはムダな時間とCPUパワーを取られるところをサボることでサービスを走らせたところが違いになった。リジッドにやっていたらとてもじゃないけど動かないのをシステムをどうサボらせるかという設計が凄いんだという。そういった思想的なところがとても大切ですね。ところで、話のたとえに航空業界がよく出てくるけれど、深い思い入れがあるの?」

米重 「そもそも、起業したきっかけが航空会社を作りたい、というところだったんです。中学生のときに同級生が飛行機に詳しくて。私は文系だったので(飛行機が)なぜ飛ぶかについては興味がありませんでしたが、航空会社の経営や空港政策に興味を持って接してみると、日本の航空業界には問題がたくさんあると感じました。

 たとえば東京ー札幌の運賃が3万5500円もすると、そのうち8000円が税金(公租公課)なんです。着陸料だったり燃油税だったり。海外だと8000円もあればかなり遠くまで飛べますよね。日本の航空運賃は世界に比べてとにかく高い。しかも都市部の空港は満杯で、市場の成長余地を奪っている。日本だと旅客航空需要の6割が羽田に集中しているんです。結果、羽田のキャパシティがいっぱいになっていた間は航空市場の成長も止まっていた。国際線に関しても、過去10年間平均運賃は上がる一方で、輸送量は下がっている。つまり、日本人は海外に行きづらくなっているわけです」

遠藤 「やけに詳しいね。そっちにいかなかった理由はあるんですか?」

米重 「いや、今でもいずれ航空業界に行くつもりでいます。今このタイミングで会社をやっているひとつの理由は、2010年に羽田空港が再拡張されて発着枠が増えたこと。前後して成田の枠も増えます。すると市場に成長の余地が出てきます。その余地がまだ残っているうちに参入できれば、航空会社をやってもうまくいく可能性が高いんです。できれば、それまでにこの通信社を上場させて、ある程度資金を貯めて航空会社を……」

遠藤 「ちょっと待って! 俺たち旧メディアがさんざん説教されているような気分になっていたけれど、要するに資金集めでやっているんだ。でもそれくらいの割り切りがいい!!(笑)」

米重 「JX通信社がうまくいくと、もしかしたらみなさんも、遠藤さんも安く飛行機に乗れるかもしれませんよ(笑)。というのはさておき、私の中で航空会社とメディアが似ている、と思っている点が3つあるんです」

遠藤 「お、いいですね」

米重 「1つめは、市場規模が大きいこと。全国民を相手に商売をしている。2つめは、巨大な装置産業的な側面がある。3つめは許認可事業である。航空であれ、テレビ局であれ。日本のマスメディアの中心にはテレビがあって、実は構造を見てみると、航空と似た問題をはらんでいるのではないか、と思っています」

遠藤 「学生時代からずっと問題意識を持っていらっしゃったんですね」

米重 「そうですね。何というか、ずっと中二病のように悶々としていました。そのまま大人になっちゃったものだからたち悪いですよね。でも、航空会社を作ると言うと、周囲から『えっ』という顔をされるんですが、あれは段取りを踏めば作れるものなんですよ。最近は新しい航空会社が出てきたので、世間の認識が少しずつ変わってきているような気もしています。

 経済の流れはヒト、モノ、カネだと言いますよね。でも結局はヒトがモノやカネを動かしている。そして、更にそのヒトを動かすのは情報。つまり、ヒト、モノ、カネのトライアングルを外周でガンガンまわしているのが情報なのではないでしょうか。その情報をよりよく多くの人に届ける手段を作ることで世の中を変えるきっかけが作れれば、次はヒトを運ぶという仕事をやりたいです」

遠藤 「IT長者ってその次に宇宙を目指す方が多いですが、そっちは?」

米重 「宇宙は興味ないですね。やりたいのは成層圏よりも下の事業なんです。宇宙と地球の間で経済は成立していないので、たとえば火星人が見つかって火星人との間で年間数兆円のビジネスができれば別ですが(笑)。そういうことは、自分が生きているうちにはないんでしょうね。

 日本がいままでものづくり中心でやってきた国だと思っているかたが多いと思います。が、今は韓国、中国、台湾がものすごいスピードで追い上げ、追い越してきている。結局、そんなところよりも、先進国であるからには、ヒトや情報を動かすという部分で力を発揮しないと国としてやっていけなくなるのではないでしょうか。ヒトを運ぶのは航空ですが、航空だけでなく対外的な情報発信といった分野でも日本は遅れをとっています。

 それと、メディアに関しては、インターネットでは米国が先に進んでいる。もし、私たちの仮説が世界で受け入れられれば、日本は初めて米国に追いつけるという希望があります。それに、マスメディアの主役交代が米国ではたくさん起きている一方で、日本では50年くらいのスパンで起きていない。今世界最大の金融情報会社はブルームバーグですが、実は創業は1980年代なんですね。それからもCNNにFOXと、主役級のプレーヤーが次々と入れ替わっている。日本は黎明期から今まで変わっていませんが、インターネットが登場したことで入れ替わるタイミングに来ている気がします。

 仮に私ができなくても誰かが代わりにやる、そういう必然的な流れがあるんじゃないかと思いますね」

米重 克洋(よねしげ かつひろ)

学習院大学経済学部在籍中、株式会社JX通信社代表取締役社長。学生時代にメディアのあり方について研究し起業に至った。夢は航空会社の設立。

日本マイクロソフトは、スタートアップ企業の成功を強力に支援します! クラウド環境の提供、開発用ソフトウェアの提供、技術サポートなど、開発時の支援から、スタートアップ企業のサービスを広く紹介するマーケティング支援、さらに有望なスタートアップには、最大で6万ドルのクラウド環境もご提供します。

JX通信社はウェブメディア「vingow」などサービスを開発・提案する事業のほか、TwitterやFacebookを使ったソーシャルメディアマーケティング、広告・販促の提案など手掛ける。小さな円が集まってぼやけた大きな円を描いたロゴマークは「見方を変えると、見えるものがある」という同社の信念を示している。

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