戦略が売り上げに直結した
改めて、完成したサイトを見てほしい。
トップの最も目立つ上部に贈答用のお肉の写真を表示し、ギフト用、高級感などを演出している。ここで注目したいのは、「贈りたいおいしさをお求めやすく」というキャッチコピーだ。
「近江牛は高級なお肉です。けれど、松阪牛や神戸牛を探している人から見れば、競合店の調査から20~30%安いので割安感があるんです。それをキャッチコピーとして強調することで、ターゲットユーザーにとってのお手頃感を演出し、セールスポイントのひとつにしました」(村上さん)
また、メニューバーを見ると、「ギフト用商品」と並列で、「ご自宅用商品」、「サカエヤのこだわり」などが並んでいるのが分かる。そのため、初めて来店した人でも、ギフト商品だけではなく自宅用のお肉も扱っていることや、何かしらのこだわりを持って販売しているお店なのだと、すぐに分かるようになっている。
「動線についても、ページの上の方は商品紹介コーナー、下の方はお店のこだわりを語るコーナーになるように明確に分けたので、今までよりもはるかに、見たい情報にアクセスしやすくなったと思います。棲み分けが成功したことで、本来、読んでほしかった新保さんのこだわりを述べたページのアクセスも着実に伸びています」(村上さん)
また、旧サイトのサイトマップを作って明確になったのは、ほとんどのコンテンツがトップページからリンクがはられているため、トップページからの選択肢が多すぎて、目的のコンテンツを見つけるのが難しい構造になっていることだった。トップページに集中していた情報を整理して、表示のグループ化とサイト構造の階層化をしたことで、来店者が探している情報にたどりつきやすくなったのだ。
デザイン自体は、リニューアル前のサイトに比べてかなりすっきりしたが、これは、最近のECショップの“王道”なのだという。
「今のサイトは一昔前よりも、余白を活かしたデザインになっています。『近江牛.com』なら、ページ上部の『お試し近江牛』というバナーは、他のバナーより余白を多めにとって強調しています。このように、メリハリをつけて見せれば、お客さまにとっても“お店の主張”が見えて、何からクリックすればいいのか即座に分かるメリットがあります」(村上さん)
リニューアル後の平均売り上げは、前年比132%。しっかりとした調査分析により、誰に、何を売っていくのかという戦略の結果だ。新しいサイトについて、『近江牛.com』の店主・新保さんはこう話す。
「ゴンウェブコンサルティングは、修繕の必要だったボロ家を、基礎工事がしっかりした家(サイト)にしてくれました。大切なのはその後。建てた家に“ぬくもり”を吹き込むのは店主にしかできません。良いお店、成功しているお店ほど、商品力と人間力のバランスがいい。ぼくのお店も今まで以上にその両方を追求し、お客様とのつながりを大切にしたいと思います」