こうした積み重ねにより、GeForce GTX 580が30億個で520mm2だったのに対して、GeForce GTX 680は35.4億個で294mm2と、トランジスター数をほとんど変えずにダイサイズを大幅に減らした。これでトータル性能を倍近くに上げただから、これは非常に効果的だったと言える。
このダイサイズの縮小は、派生型を作る際にも有利である。初期コストを無視すれば、GPUの製造原価はほぼダイサイズに比例する。これは特に、GeForce GTX 670のように「一部を無効化してその分価格を下げる」製品を作る場合に有利である。原価が低ければ、多少製品価格を下げても十分な利益が確保できるからだ。そして割安な製品を大量に作って売ることができれば、初期コストの回収も容易になるというわけだ。
ただしこの変更、確かにGPU向けには適しているのだが、「Tesla」などGPGPU向け製品には、難しい問題をはらんでいる。ハードウェアスケジューラーを廃止したというのは、逆に言えばドライバーのできで性能が左右されやすいという問題でもある。もちろんハードウェアならば効率が高いとは限らないのだが、ハードウェアスケジューラーは一度作ってしまうとそうそう内部の変更はできないから、ある意味性能のブレは少ない。ところがこれをドライバーでやるとなると、今度はドライバーの出来具合で性能がブレやすい。特にGPGPU的な用途でこれが適切な方法かという答えは、今のところ出ていない。
また64bit演算をすっぱり切ったのは、HPC向けには致命的である。実際64bit演算をさせた場合、GeForce GTX 680の性能はGeForce GTX 580よりもはるかに低くなる。ただし、HPC以外の32bit演算で済む用途にはKeplerの第1世代で十分ということで、32bit演算に向けた専用のTeslaをまずは出荷し、HPC向けは後述する「GK110」でカバーという形になるようだ。
エントリー・ローエンド向けの
GK107もすでにOEM向けに出荷開始
改めてロードマップに戻ろう。GeForce GTX 670に続き、やはりGK104コアを使いつつSMXを2つ無効にした「GeForce GTX 660 Ti」が予定されている。これは2012年第3四半期、おそらく7月ないし8月に出荷予定だ。ここまで遅くなるのは、予想外にTSMCの28nmプロセスの歩留まりが良く、SMXを2つ無効にしないと出荷できないようなコアがそれほど溜まっていないからのようだ。だからといって、無事なコアを無理やり無効にしてまで出荷できるほどにはTSMCの生産量が多くないから、当面はGeForce GTX 680/670を出荷することに専念するようだ。
また、SMXを2つだけ搭載した「GK107」コアはすでに完成しており、これは4月に「GeForce GT 640」および「GeForce GT 630」としてOEM向けに出荷を開始している。ところがGeForce GT 640に関しては、GDDR5を使うものとDDR3を使うものの2種類と、さらにFermi世代の「GeForce GTX 545」(DDR3)を、そのまま改称したものの3種類が混在しているという、恐ろしくわかりにくいラインナップになっている(関連リンク)。またGeForce GT 630は、GK107からSMXをひとつ無効化したローエンドモデルとなる。
ちなみにOEM向けとしては、ほかに「GeForce GT 645」「GeForce GT 620」「GeForce 605」という製品が、4月に発表されている。これらはいずれもFermi世代をOEM向けに改称しただけのモデルである。先に述べたとおり28nmプロセスの供給が逼迫しているので、このあたりは40nmプロセスで製造するほうが供給の面でも無難だ。また、いまさら500番台の番号では売りにくいから、600番台にリナンバリングするのも無理はないと思う。わかりにくいことに変わりはないが。
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