化学的な強化処理で薄くても強化可能
これに対して化学強化ガラスは、強化層をイオン交換による化学処理によって作り出す。具体的には、ガラス表面のナトリウムイオンやリチウムイオンを、カリウムイオンに一部置き換える。ナトリウムイオン(0.97Å)よりカリウムイオン(1.33Å)の方がイオン半径が大きく、圧縮応力層だけを比較的薄く(数μm~数100μm)作成できる。
化学強化ガラスは加工温度が低めなので、薄いガラスでも熱変形を起こさずに強化加工できるメリットがある。さらに表面のみを強化するため後加工が可能で、割れた状態も普通のガラス同様だ。
強化ガラスなので表面硬度が高く、車のカギでこすった程度では傷つかないが、まったくキズがつかないわけではない。また、薄くすればたわみやすくなるので、過度に薄い化学強化ガラスは液晶パネルに力が入って、カバーガラスは無事でも液晶パネルが割れることもある。
見た目の美しさもあって、採用例はスマホやタブレットだけではなくノートパソコンにも増えている。レノボはThinkPad X1でディスプレー表面にゴリラガラスを採用したが、記者発表会では実験用のフロントパネルとドライバーを用意しており、「自由に叩いてください」と強さをアピールしていた。逆手にドライバーを持ってガンガンと叩いてみたが、文字通り傷ひとつつかないことで強さを実感できた。
今後の発展にも期待が
ガラス本来の硬さと質感はそのままで、イオン交換によって表面をより強靭にする化学強化ガラスは、さらなる進化が見込まれる。
例えば、1月に米国で開かれた展示会「International CES 2012」で発表された「ゴリラガラス2」は、前モデルよりも20%薄い厚さでも、同程度の強度を確保できるとアナウンスされている。CES会場でも強度比較デモを展示ステージで披露して、来場者の関心を集めていた。
イオン交換の深さや組成を見直すことで丈夫さと表面の硬度がより増せば、保護フィルムなしでも安心してスマートフォンを使えるようになるだろう。また、薄くても丈夫で硬いガラスパネルができれば、スマートフォンの重量増加対策にもなる。
また、デザイン自由度の高い素材への進化も見込まれる。例えば、以前グーグルがAndroid 4.0の説明会を行なった際に、世界初のAndroid 4.0搭載スマートフォンである「GALAXY Nexus」は、曲げガラスを使っているのでゴリラガラスは使えなかったと説明していた(ゆえにほかの強化ガラスを使っている)。しかし、先日発表されたKDDIの「HTC J」は、カーブのあるカバーガラスを使っているにも関わらず、ゴリラガラスを使うことができたという。
ちなみに曲げ加工に関しては、ショット社のXensation Cover 3Dは他社製品と比べて、軟化温度が低く熱成形加工が容易なことを特徴としている。軟化温度が下がればそれだけ複雑な形状を低コストで行なえる。
ゴリラガラス以外にも製品が登場したことで、メーカー間の開発競争も続くだろう。今後の化学強化ガラスの進化にはまだまだ期待できそうだ。
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