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塩田紳二のWindows 8 IN-N-OUT 第3回

Windows 8のエディションはWindows 7と何が違うのか?

2012年05月10日 12時00分更新

文● 塩田紳二

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 DirectAccess、BranchCache、AppLocker、VDI enhancementは、Windows 7 UltimateやWindows 7 Enterpriseで利用可能だった機能である。AppLockerを除けば、いずれもWindows Server 2008R2との連携で利用する機能なので、クライアント側のみでは意味がない。

 New Windows 8 App Deploymentについて簡単に説明すると、企業内で独自のMetro Styleアプリケーションを配布可能にする機能である。セキュリティーや著作権管理のため、Metro環境は原則としてWindows Storeか、Windows Updateからのみアプリケーションをインストール可能となっている。これまでのWindowsアプリケーションのように、ファイルをどこかから持ってきてインストールというやり方はできない。しかし、企業内で独自のMetro Stlyeアプリケーションを配布したいというニーズは、当然考えられる。そうしたニーズに対応するため、ドメインに参加しているEnterpriseエディションのみ、企業内に設置した専用サーバーからMetro Styleアプリケーションのインストールが可能になるようだ。

 またEnterpriseエディションに関しては、ソフトウェアアシュアランス(SA)契約との組み合わせで提供されるライセンス機能などもある。これには、Windows To GOの利用権や、Windows RTに対する仮想デスクトップアクセス(VDA)の利用権などが含まれるようだ。

将来Windows Phoneにも
Windows RTが使われる?

 スマートフォン向けのWindows Phoneには、次の「Windows Phone 8」でWindows RTのカーネルがベースになる、という噂もある。現在のWindows Phone 7/7.5は、Windows CE 6.xベースだが、MetroはWindows Phone用(実際にはその前身となるZune用)に作られたユーザーインターフェースだ。

 Windows Phoneのアプリケーションは、SilverlightかXNA Frameworkで開発する。CPUにはARMプロセッサーを採用しているが、CPUの機械語コードによるプログラム開発は認められていない。Silverlightでは、開発言語として.NET系言語(C#,Visual Basic)などが利用できる。XNAもC#やVisual Basicでの開発が可能だ。2つの環境は基本的に、.NET Frameworkのサブセットをベースにしているが、若干目的が違う。

 Silverlightは、WPF(Windows Presentation Foundation、.NETの表示用ライブラリ)のサブセット+独自機能であり、元々はウェブブラウザーのプラグインとして、Adobe Flashのようにインタラクティブ性の高いアプリケーションを開発するために作られた。Silverlight自体はWindows 7でも利用可能で、ウェブブラウザー外でも利用することができる。Windows Phoneでもウェブブラウザー外のアプリケーションとして動作する。

 XNAは元々、Windows Mobile用に開発された.NET Compact FrameWorkに独自機能を加えたもので、ゲームソフト開発用として作られて、Xbox 360やWindows 7/Vista/XPに対応している。

 こういった理由により、Windows RT上でWindows Phone 7/7.5のアプリケーションを動かすことに、大きな技術的な問題はない。マイクロソフトが自社製品であるSilverlightやXNA Frameworkなどを用意すればいいだけだ。つまり、Windows RTでWindows Phoneとの互換性を確保することは、それほどむずかしくないといえる。

 Windows Phoneのアプリケーション開発者も、Windows Phoneと同様にVisual Studio上でC#やVisual Basicで開発すればよく、開発者の技術習得の敷居は低いとみていいだろう。結局どちらも.NET Frameworkベースであり、ライブラリの仕様が違うだけである。Silverlightでの開発経験があれば、WinRTでの開発を行なうことは難しくなく、またSilverlightのアプリケーションをWinRT上で動かすことも難しくない。

 マイクロソフトから見れば、Windows Phone、Windows RT、Windows 8の3プラットフォームで、開発者が分断されることは好ましくない。既存のWin32 APIを使ったアプリケーションは別として、新規環境となるMetroに関しては、開発者をなるべく多く確保しなければならない。そうであれば、Windows RTとWindows Phoneのベースを共通として、Windows Phoneは「デスクトップのないWindows RTサブセット」のような形にして、共通の環境とすることは可能だろう。

 iOSやAndroidの場合、スマートフォンとタブレットは同じアプリケーション実行環境であり、同一のアプリケーションが利用できるのが普通だ。そう考えると、Windows Phone 8がWindows RTをベースにするという噂は、案外信憑性は高いのかもしれない。

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