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大河原克行が斬る「日本のIT業界」 第33回

ゲームビジネス開始後、初の営業赤字

任天堂はゲーム人口拡大の主役に返り咲けるのか?

2012年05月08日 09時00分更新

文● 大河原克行

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ソフトウェアビジネスで新たな挑戦へ

 任天堂がゲームビジネスにおいて重視しているのは、ソフトウェアだ。

 そして、ソフトウェアで収益を稼ぐというビジネスモデルには変化がない。任天堂の3代目社長を務めた山内溥氏は、「お客様はゲーム機が欲しいのではなく、ゲームソフトで遊びたい」と、常々語っていた。

 岩田社長も、「お客様がゲーム機を購入する目的は、よくできたパッケージのゲームソフトを遊びたいから」と語る。

 つまり、ニンテンドー3DSでも、Wii Uでも、その普及戦略には、キラーアプリケーションの存在が重要であるという姿勢は変わらない。

 また、新たなプラットフォームの展開については、次のように語る。

 「定番タイトルの活性維持と、有力タイトルを定期的に継続投入することが必要。特に、昨今は、商品が過去のものになってしまうスピードが上がっているため、定番タイトルの活性を維持しながら、ある程度以上の密度で、有力タイトルを継続的に市場に投入していく必要がある。任天堂プラットフォームでは、時に自社タイトルばかりが市場で目立ちすぎであるという批判があるが、プラットフォームを普及させていく過程では、ファーストパーティソフト(=任天堂製のソフトウェア)でプラットフォーム普及を牽引することは、プラットフォームホルダーとしての任天堂の重要な役割である、というのが私たちの考え方。今期は、通期にわたって、それが維持できるようにすることで、目標を達成したい」とする。

 そのアプリケーション販売において、今年、任天堂は大きな挑戦を開始する。それが、先にも触れたニンテンドーeショップである。

 New スーパーマリオブラザーズ2から開始するニンテンドーeショップは、原則として、パッケージとデジタルの2つの形態で併売する仕組みを取りながら、デジタル形態でダウンロードしたソフトは、ユーザーのSDカードに格納し、ダウンロードした本体でのみで使用できるという仕組みにする。パッケージ版では、家族や友人の間でのソフトの共有ができたが、これがデジタル版では利用できない。しかし、複数のソフトウェアを本体に格納したまま持ち歩くことができるという利点があるという。どうぶつの森シリーズなど、毎日利用するソフトを複数利用している際などには、カードを差し替える必要がなく利用できるため便利だと強調する。

 また、小売店と連動する点も特徴だ。小売店の店頭やオンライン・ショッピングサイトでソフトウェアの購入手続きを行うと、16桁のソフト引き替え番号を発行。それをニンテンドーeショップに入力すると購入できるという仕組みを用意する。

 「いつも慣れている方法で、ソフトを購入してもらうことで、オンラインによる購入のハードルを下げること、小売店にとっては、品切れや在庫負担の心配がないというメリットがある」という。同時に、「在庫リスクの問題によって、これまで、当社の商品を取り扱っていただくことができなかった販売チャネルを通じて、商品を展開する可能性も広がる」と期待を寄せる。

 岩田社長は、「高額課金を誘発するガチャ課金型のビジネスは、今後とも、行うつもりはまったくない」としているが、ニンテンドーeショップの仕組みを利用して、どんな新たな提案が行われるのかといった点も注目したい。

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