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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第150回

Ivy Bridge-Eはスキップ? 2012~2013年のインテルCPU

2012年05月07日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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熱の限界により高クロック製品が出しにくい?

Sandy Bridge~Ivy Bridge世代のデスクトップCPUロードマップ

 実はこの放熱の問題が、今後の展開を難しくしている。PCメーカーはこれまでのデスクトップ向けでつちかった、95Wや130WといったTDPのCPUを搭載するための熱設計の蓄積があるため、「もっとTDPが増えてもいいから高速なCPUが欲しい」というリクエストを出しているらしい。ところが、Ivy BridgeではTDPよりもTjMAXが先に限界まで達してしまっているので、例えばTDP 95WのIvyBridgeベースの製品をぽんと出すのは、かなり難しいそうだ。

 もちろん、十分に冷えるCPUクーラーと組み合わせれば、Ivy BridgeはTDPが少ない分だけオーバークロック性が良好なので、水冷クーラーを前提としてCore i7 Extreme Edition向けにより動作周波数の高い製品を出す、といったことはまったく不可能というわけではないらしい。ただ幸い(?)にも、競合のAMD FXの性能がまったくかんばしくないので、Extreme Edition向けの製品ラインを更新する必要がほとんどなく、当面Core i7の製品ラインは現行のまま、特に高動作周波数製品を投入する予定もないようだ。

Sandy Bridge-EからIvy Bridge-Eへの移行は検討中
Haswellに飛ぶ可能性も?

 今後の話を最後にまとめよう。インテルは今年一杯で32nmから22nmへの移行をどんどん進めてゆくが、Core i7 Extreme Editionと一部のCore i7に関しては、2012年末と予定される「Ivy Bridge-E」へ転換するかどうかを、現在検討中のようだ。これは上で述べたTjMAXの問題により、Sandy Bridge-EをIvy Bridge-Eに変えても、ほとんど性能の伸びしろがないことに起因する。

 Xeon向けには10~12コア以上のダイを持つ製品を投入するが、こちらは(熱密度を下げるための目的もあって)より大きなLLCを搭載する形となり、現在のSandy Bridge-Eと同程度のダイサイズで、動作時のTDPはやや引き下げるという方向になるようだ。つまり動作周波数はほとんど上げずに、コア数とLLCを増やしてTDPを下げることで、性能/消費電力比を大幅に改善するという方向である。サーバー向けにはコアの数を増やしたほうが効果的だが、Core i7 Extreme Editionにはあまり適当な選択肢とはいえないわけで、Ivy Bridge-Eはパスして次のHaswellにいきなり移行する、という可能性もあるようだ(この場合はプラットフォームが全面的に更新になる)。

 一方メインストリーム向けは、2013年第1四半期を目処に「Haswell」を投入することになる。プロセスそのものはIvy Bridgeと同じく22nmであるが、マイクロアーキテクチャーが更新と言われつつも、その詳細はいまだに不明である。

 実のところ、PCに留まらずCPU業界全体を見渡すと、これまでのようなIPC(1サイクルあたりの実行命令数)改善から、スループット(1サイクルあたりの処理データ量)の改善という方向に舵を切りつつある。この舵をいち早く(しかも大きく)切ったのが「Bulldozer」こと「AMD FX」であるが、Haswellも同じくスループット重視に舵を切るのではないか、とも言われている。

 ただ筆者の個人的な見解としては、AMDほど急激に舵は切らないだろうという気がする。基本的なアーキテクチャーは既存のSandy Bridge/Ivy Bridgeから大きくは外れずに、ただしハイパー・スレッディング利用時のスループットを高めるような、実行ユニット段以降の改変が入ってくるのではないかと予想している。

 またGPU性能の改善は引き続き重点項目であり、むしろ見かけはこちらのほうが大きなインパクトであろう。GPUに関しては、Ivy BridgeでもまだAMDのAシリーズ内蔵GPUに大きく水をあけられている。一足飛びに同レベルには追いつかないにしても、Llano世代のAPUに並ぶ程度まで改善されてくるのではないか、と予想している。

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