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山谷剛史の「アジアIT小話」 第20回

中国でもIvy Bridge解禁!でも日本のようなお祭には……

2012年05月01日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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日本の深夜販売に潜む“自作PCのロマン”
それを理解できない中国人

 さて今回の新Coreプロセッサーの深夜販売は中国で珍しく紹介されなかったが、新CPUやWindowsなどのPC関連からゲーム関連まで、深夜販売のイベントは中国でもよく紹介される。

 では、過去の深夜販売のニュースは中国人読者にどう映ったのか、感想コメントを紹介すると、最近のやりとりではアンチ日本のコメントは潜め、「日本人は並ぶのが好きだね」といった意見や「中国ではいつになったらこういうことができるのか」といった意見のほか、「こんな高い製品が簡単に買えて日本人は金持ちで羨ましい。それに比べて俺たちは……」「初物価格で買うのはIT誌の編集部くらいだろ」といった意見が目立つ。

中国ネットユーザーの平均月収。赤は2011年末、青は2010年末。1元=13円で計算するとPCパーツ深夜販売に盛り上がれない現実が見えてくる

中国ネットユーザーの平均月収。赤は2011年末、青は2010年末。1元=13円で計算するとPCパーツ深夜販売に盛り上がれない現実が見えてくる

 5億人を超える中国ネットユーザーのうち、4億人が家のADSLを利用するという。つまり家にPCがある人が多いわけだが、そんなネットユーザーの月収は日本円で3万円台もあればいいほうだ。

 そんなお財布事情から、趣味もかねて人柱志望でPCを自作したり、気軽にパーツを交換する人はあまり見たことがない。

 既存の自作PCの調子が悪いという理由でパーツを交換する人はたまにいて、デスクトップPCを電脳街で持ち運んでいれば、各所から「修理(交換)するならうちにおいで!」と声がかかる。

 多くの中国人にとってPCを長く使おうという観点から、CeleronやPentiumといったローエンドCPUは嫌がられているとはいえ、振り返ると現実には人気のCPUは1000元前後(1万円弱~1万5000円程度)のものである。

 換金性のあるPCパーツは売れるという例外はあるが(7万円の高級グラボが中国でバカ売れしている理由)、一般的にはオーバークロックができると認知され、かつこの価格帯に値が下がったCPUが人気となる。

 実際、PCショップを巡ってもオーバークロック耐性の高いCPUをよく店員から勧められる。なるほど確かに日本のようにおいそれと初物のCPUを買うことはできない。

 中国のPCショップでショップブランドPCを買う場合、パーツを選ぶだけで後は店が無料で組んでくれる。だが日本なら、組んで動してみる人柱感覚が楽しいという人もいるだろう。

 中国での「日本における深夜販売」についてのネットユーザーの意見を見ると、日本のそれが趣味を兼ねたものだという話はまるでなかった。おそらくは日本の自作PC愛好者にとって当たり前の前提を、中国人は気づいていないのだろう。

 もし中国の人と熱いPC談義を交わすような機会があれば、日本の自作PCは「プラモデル感覚のように組み立てるプロセスが楽しい」のであり、また「ベンチマークで速い数字を出すのが楽しい」といった“日本人視点の自作PCのロマン”を丁寧に熱く語ってほしい。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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