Windows 8タブレットのタッチセンサーは
1mm以内の精度を求められる
システムで定義した基本動作は、Windows 8がユーザーの指の動きやマウスなどの動きをそれぞれ解析して、アプリケーションへと通知する。スライドのような動作では、ユーザーの指が触れた瞬間にタッチセンサーは反応できるが、それがタップなのか、ホールドなのか、スライドなのかは、指がすぐ離れたか(タップ)、動かずにそのままなのか(ホールド)、タッチしたまま動くのか(スライド/ドラッグ)など、指を置いたその次の動作が行なわれるまでわからない。また、上下左右のどちらの方向に動くのか見極めねばならない。
手による操作では、自分は指を動かしているつもりがなくとも、細かい震えなどにより、タッチセンサーが出力する座標値が変化する可能性があり、動かしている方向とは違う方向に動いたように見える可能性もある。そのため、タッチやホールドのような動作では、座標が一定範囲内に収まるようであれば、静止状態と判断するようになっている。
タッチパネル自体の精度にも依存する。「Build」で公開されたドキュメントでは、Windows 8用タッチパネルの精度は、すべてのエリアで1mm以内とされている。Windows 8では、タッチパネルは物理的なサイズを報告できることが要求されており、「画面の中心を原点としたのときの物理的な長さ」を単位とした座標で、タッチした場所を報告できることが望まれている。なお、タッチパネル上で9mm程度の大きさがあれば、Windows 8のプロトタイプはかなり高い精度でオブジェクトを正しく選択できるという。
タッチの基本操作は、タブレットに
PCの体験を拡張するためのもの
Windows 8はタブレットで使うことを想定しており、従来Windowsとの互換性よりも、タブレットとしての使い勝手を優先して設計された部分もある。iOSやAndroidのタブレットと直接競合することを想定して、「タブレットでも使える」ではなく「タブレットで使え、マウス&キーボードでも使える」ユーザーインターフェースを目標にしている。そのためメトロ環境は、タブレットでのタッチ利用に最適化させてある。
Windows 8開発の責任者であるマイクロソフトのスティーブン・シノフスキー氏は、「タブレットでもノートPCでも、いままでと同じようにPCでやりたいことができるようにしたのがWindows 8だ」といった発言をしている。これはつまり、タブレットであっても、メールやウェブブラウジングだけというカジュアルな利用以外にも使える環境を、Windows 8で提供することを狙っているということだ。
タッチはタブレットの標準操作であり、その使い勝手を向上させることは、Windows 8の目的でもある。そのためには、ユーザーの「意図」を間違いなく認識することが必要となる。横スクロールと直交する方向にオブジェクトを動かす「Cross-slide」を標準操作に規定しているのは、動作の検出を容易にすることで、スクロールのためのスライド動作と混同することがないようにするためのものだ。
液晶ディスプレーの外から指をスワイプしてチャームを表示させるという、一見わかりにくい操作方法も、従来型アプリケーションのメニューや右クリックメニューのように多数の機能を、指による操作で実現するために考えだされた。このやり方は、「子供のような気持ちで操作すれば使える」という方向性とは異なるだろう。しかし、メールやウェブ閲覧といった「ポイント&クリック」で操作可能なアプリケーションだけではなく、文書作成や編集/加工といった、複雑な機能を持つアプリケーションを操作するために考案されたものだ。
また、システムの基本操作を行なうオブジェクト(例えばタスクバーやメニューバー)を、常に画面上に表示することはわかりやすさにつながるが、デスクトップやノートPCに比べて画面解像度が低いタブレットでは、その分アプリケーションが使える領域が減ってしまう。
だから普段はそうしたものを表示させずに、常に同じ操作(画面外からのスワイプ)でシステム側の機能(チャーム)を表示できる、という方向で設計されたと考えられる。日常的に使う動作なら忘れることもないだろうし、常にメニューやボタンの類を表示することは、不要なときに煩わしさを感じることもある。チャーム表示の動作やタスク切り替え操作に、ボタンではなく動作だけを定義したWindows 8は、Android 3.x/4.xのホームキーに対する、マイクロソフトの回答とも言えるものだ。
従来のパソコンのように、さまざまな用途にタブレットで対応することを目指したWindows 8。7つの基本操作で十分かどうか、最適なのかどうかは、製品を使ったユーザーやアプリの開発者が個々に判断することになるだろう。
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