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日本通信、接続料の算定式でドコモを提訴

2012年04月19日 23時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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 b-mobileシリーズなど、NTTドコモのネットワークを利用したMVNO事業を展開している日本通信は、接続料算定においてNTTドコモに契約に違反する行為があったとして、提訴したと発表した。

 これにともなう記者説明会では、今回の提訴に至るまでの経緯と、日本通信側の主張が説明された。

ドコモ/KDDIは相互接続と
原価+適正な利潤での料金が義務付けられている

日本通信 代表取締役社長 三田聖二氏

日本通信 代表取締役専務 福田尚久氏

 電気通信事業法では、独占状態にある「指定電気通信設備」に指定された設備は、他の電気通信事業者への開放が義務付けられている(ドミナント規制と呼ばれる)。携帯通信に関する、第二種指定電気通信設備を有する事業者は国内ではNTTドコモとKDDIで、接続料は「適正な原価に適正な利潤を加えたもの」とされている。

 この制度を利用し、2007年にドコモに接続を申し入れたのが日本通信である。ドコモは一旦拒否するものの、2007年11月に総務大臣の裁定により、帯域幅による課金での接続が認められることになった。

 ただ、具体的な金額や技術面については協議が十分ではないということで裁定は下らず、「接続料の算定式を協議し、合意すること」「算定式に代入する数値はドコモがNDAのもと開示すること」という指針が出された。そして、2008年6月に算定式の内容について、両社間で契約が結ばれている。

 日本通信の主張は、2010年度以降の接続料において、この契約に含まれるものと異なる算定式で算出した接続料が、NTTドコモによって接続約款として総務省に届け出されているというものだ。

2008年の合意内容とは異なる算定式による接続料が今回の焦点

 算定式とは、通信設備に対する、相互接続を希望する業者の負担分を計算する数式で、通信網のキャパシティーや原価の数字をその式に代入して、接続料を計算する。算定式が変われば、当然その結果となる接続料が上下するわけで、MVNO事業者にとっては経営の根幹に関わる問題となる。

支配力を持つ通信事業者は相互接続の義務を負っている

相互接続の際の接続料についても、総務大臣からの指針が出されている

 ちなみに、固定通信ではドミナント規制により、NTT東西が相互接続の義務を負うとともに、接続料は認可制であり、算定式は明白に規定されている。これに対して携帯通信では、民間の事業者間の契約によって算定式が決められ、そこで決まった接続料を総務省に提出する届出制が採用されている。ところがドコモは、合意されていない算定式を用いて接続料を総務省に届け出し、料金を請求しているとする。

焦点は金額ではなく
従来の算定式による接続料の設定

 日本通信側が合意に基づかない算定式に気づいたのは、2011年初頭。ドコモから2010年度の接続料が示されたのち、その算定式と代入値の公開を求めた結果、契約内容とは異なる算定式の存在を確認。長期にわたり協議を実施したが合意に至らず、今回の提訴につながった。

 ただ、接続料自体はネットワークの高速化などにより、毎年値下げはつづいており、本来の算定式による接続料とドコモからの請求額の差は2010年度と2011年度を合わせて8000万円と、「この金額自体は大したものではない」(同社代表取締役専務 福田尚久氏)と語る。ただ、一度両社間で合意している算定式の違反を容認することで、今後の接続料の設定がドコモ側の自由になってしまうため、これを断固として阻止するとした。

焦点は接続料の金額そのものではないとする。ドコモの主張する金額を支払うことで、サービスを継続する

 なお、ここまでにあるとおり、日本通信は従来の合意内容に含まれる算定式による接続料を正当なものと主張しているが、現在ドコモの接続約款に示されている接続料を支払うことで、ドコモ側が接続を切断したり、妨害することはできず、今後もユーザーやパートナー企業への影響はないとしている。


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