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編集者の眼第40回

コンテンツSEOを意識した大手企業WEBサイト8

2012年04月20日 11時00分更新

文●中野克平/Web Professional編集部

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 American Expressのクレジットカード明細書には、支払い先の業種が印字される。先日Googleの有料サービスの項目を見てハッとしたのは業種欄が「広告代理店」だったこと。グーグルをIT企業だと思っていた大手広告代理店がWeb対応に遅れたのも無理はない。

出かけるときに忘れずに持っていくと自分の収入を忘れて使うのが怖いです

 グーグルは広告代理店なので、検索エンジンの価値を守り、高めていく動機がある。Facebookのほうが無駄な情報がなくていいよね、Twitterのほうがいろんな情報に接せられて便利だよね、と思われたらこれまで沈めてきたライバルと同じ運命をたどってしまう。ユーザーが求める情報を最短で探し出し、ノイズだらけのWebから高質な情報を抜き取るための努力を惜しまず続けているのは、検索エンジンGoogleがビジネスの中心的価値だからだ。

 従来のSEOがよく言えば「どうすればGoogleのアルゴリズムに高く評価されるか」、悪く言えば「Googleをどうやって騙すか」に傾斜していたのに対して、ソーシャルメディアでの注目まで念頭に置く最近のGoogle対策では、どうしたらよいコンテンツを作るかにも関心が及ぶようになった。

 とはいえ、Googleにはあるコンテンツがユーザーの検索キーワードに合致しているかまでは計算できても、文章が役に立つか、読んだら面白いかまではわからない。だからGoogleでは、役に立つかどうかをコンテンツのキーワード出現傾向や直帰率、ソーシャルメディアでの伝播の仕方など、計算可能な指標に置き換えて評価し、どのページを何位に表示するべきか決めているはずだ。このあたりはWeb Professionalで連載中の『清水 誠の「その指標がデザインを決める」』で清水誠氏が解説しているように、取れない指標はない、と考えた方がよい。

 コンテンツSEOのガイドラインは「コンテンツを依頼するときのSEOチェックリスト17」に書いたとおり。「コンテンツSEO」という呼び方が適切かどうかはわからないが、今回はWeb Professional編集部が実践している「コンテンツSEO」は実際に普及しているのかを、普通名詞とGoogleサジェストで推奨される組み合わせの複合キーワード検索で上位に表示される大手企業のWebサイトがガイドラインに合致しているか見て調べてみた。なお、検索にはInternet Explorer 9を用い、Googleアカウントにはログインしていない。

「汚れ 落とし方」で1位は花王

 「汚れ 落とし方」に対応する「シミ抜きの手順と種類別落とし方」というコンテンツでGoogle検索1位は花王。10位以内にはゼブラ、サクラクレパス、ぺんてるの文具メーカーが並ぶが、家庭用洗剤メーカーでは唯一のランクインだ。タイトルは34字、本文は2979字でやや多いが、1ページでさまざまなヨゴレの落とし方を説明しており、関連キーワードを多く含んでいる。HTMLソースにスタイルシートを一部直書きしており、苦労の跡がある。

「地震保険 保険料」で2位は損保ジャパン

「地震保険 保険料」に対応する「保険料試算 入力」というコンテンツでGoogle検索2位は損保ジャパン。アフィリエイトや官公庁、業界団体のWebサイトが入り乱れる中、損保会社としては最上位に表示されている。タイトルは15字、本文は705字で少なめだが、「地震保険」と「保険料」の出現順位が検索キーワードどおりなのが評価されているのかもしれない。

「ブルーレイ プレイヤー」で3位はパイオニア

「ブルーレイ プレイヤー」に対応する「ブルーレイディスクプレーヤー」というコンテンツでGoogle検索3位はパイオニア。ECサイトが多く登場する中で、メーカーとしては6位のパナソニック、7位のソニーを抑えて上位にランクインしている。タイトルは26字、画像が大半を占め、本文のテキスト要素は258字と極端に少ないが、img要素のalt属性に「ブルーレイディスクプレーヤー」を多く含んでいることが高評価の理由かもしれない。

「ビール 種類」で4位はサッポロビール

「ビール 種類」に対応する「ビールの種類」というコンテンツを用意しているのがサッポロビール。10位以内に同業他社はなく、コンテンツSEOを強く意識していることがわかる。タイトルは32字、本文は1746字で関連キーワードを豊富に含んでいる。h1〜h5要素を使ってキレイに情報を整理しており、きちんとしたWeb制作会社の仕事とわかる。

「ポテトチップス 作り方」で5位はカルビー

 「ポテトチップス 作り方」に対応する「ポテトチップスの作り方」というコンテンツでGoogle検索5位なのがカルビー。レシピサイト、調理方法の紹介動画だらけの中で、ポテチメーカー唯一のランクイン。タイトルは22字、ほぼすべてが画像で本文は156字。ナビゲーション系のテキスト要素しかないが、alt属性には作り方の文字列が記述されている。ただし内容は工場でのポテチの製造工程。これだけで上位にランクインは考えにくいので、リンクのラベルに含まれる「ポテトチップスの作り方」が効いているのかもしれない。

「コーヒー 入れ方」で6位はUCC上島珈琲

「コーヒー 入れ方」に対応する「おいしいコーヒーのいれ方」というコンテンツでGoogle検索6位なのがUCC上島珈琲。中小のコーヒー豆専門店が多い中で大手では唯一のランクイン。タイトルは36字、本文は1563字あり、「コーヒー」や大量の関連キーワードを含んでいるのが高評価の理由だろう。

「時計 電池交換」で7位はカシオ計算機

「時計 電池交換」に対応する「時計電池交換について」というコンテンツでGoogle検索7位はカシオ計算機。中小の時計専門店が多い中、大手では唯一のランクイン。タイトルは44字で長めで、本文は407字しかないが、少ないテキストには「電池交換」の語が多い。img要素のalt属性でも「電池」が多く出現することも高い評価の理由かもしれない。

「パソコン 初期化」で8位は富士通

「パソコン 初期化」に対応する「BIOSセットアップの起動、初期化の方法や、設定方法を教えてください。」というコンテンツでGoogle検索8位は富士通。ほとんどがQ&Aサイトの中で、PCメーカーでは唯一のランクイン。タイトルは66字、本文は5860字とかなり多い。歴代の富士通製PCの初期化方法が新しい順に掲載されており、長い時間をかけて集まったリンクと、豊富な情報量が高い評価の理由かもしれない。

 ここであげた検索語は、対応するコンテンツを用意しても直接売上げには結びつきにくい。ブルーレイディスクプレイヤーの種類を調べられてもパイオニア製を購入するとは限らないし、ポテトチップスを自宅で作られたらカルビーは儲からない。

 しかし、ソーシャルメディア対応となると話は別だ。ソーシャルメディアで新商品の名前を連呼するだけでは無駄だが、お客さま候補の悩みを解決したり、従来のメディアが取材に来て尋ねたかもしれないことをコンテンツとして用意したりしておけば、商品名を連呼し、誰にも相手にされないTwitterアカウントがお客さま相談係や広報担当に変身する。5月10日にWeb制作会社のロフトワークと共催するセミナーユーザコンテキストに応えるWebライティングの鉄則  〜教えちゃっていいの!? WebProfessional編集長のチェックリスト〜では、文章の書き方からソーシャルメディア対応までを話すことになった。また、Web Professional編集部で刊行した『Google上位表示64の法則』の著者・藤井 慎二郎氏も「集客力を最大化するコンテンツ制作手法」というテーマで話す。申し込みはロフトワークのセミナー紹介ページで。

ユーザコンテキストに応えるWebライティングの鉄則  〜教えちゃっていいの!? WebProfessional編集長のチェックリスト〜

日時
2012年05月10日(木) 14:30 〜17:40 (受付開始 14:00)
主催
株式会社ロフトワーク、株式会社アスキー・メディアワークス
会場
スタジアムプレイス青山 Hall B
定員
80名
参加費
無料
対象
  • Webの成果が伸び悩んでいる方 ユーザコンテキストを意識したコンテンツを制作/発注したい方
  • Web掲載原稿のクオリティを高めたい方
  • 社内外のWeb運用チームにWebコンテンツの適切な指示を出したい方
  • マーケティング担当者、コンテンツ企画者/制作者、Webマスター、コーディング担当者


※詳細・申込みは、ロフトワークのセミナー案内ページから。

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