かつてAVEXグループ傘下のレコード会社ハッチ・エンターテイメントに、「LOiD」と呼ばれるレーベルがあった。ネット出身のアーティストを起用し、独自の企画で音源化するスタンスで、ファンからの人気も高かった。
しかし2010年末、ハッチ・エンターテイメントのAVEXへの吸収合併によりLOiDレーベルも消滅。すべてのタイトルは市場在庫だけとなり、ダウンロード音源の配信も停止した。
Image from Amazon.co.jp |
![]() |
---|
しんがー・そんぐ・らいてぃんぐ(LOiD-03) |
ところが。LOiD消滅から約1年と4ヵ月、なぜか「しんがー・そんぐ・らいてぃんぐ(LOiD-03)」※というタイトルのコンピレーションCDが、ビクターエンタテインメントから発売されることになった。普段は合成音声で作品を作っているクリエイターに、自分自身の声で持ち曲を歌わせてみた、という内容のアルバムである。
このアルバムタイトルに付いている「LOiD」とは何なのか。それがビクターからリリースされるのはなぜ? そこで、かつてLOiDレーベルを1人で切り盛りしていたフリーランスA&Rマンの村田裕作さんと、この作品に参加したクリエイターに、レーベル消滅からこの作品に至る経緯を伺った。
※ 参加しているクリエイターは、キャプテンミライ、クワガタP、みきとP、ゆよゆっぺ、マチゲリータ、baker、buzzG、FAULHEIT、家の裏でマンボウが死んでるP、DATEKEN、neko、ヒゲドライバー。
■ メンバー紹介
村田裕作(27歳)
元LOiDレーベル、現フリーランスA&R。
ヒゲドライバー(28歳)
8bit系のサウンドでニコ動以前からネットで人気を集めていたミュージシャン。
ゆよゆっぺ(22歳)
19歳でニコ動デビュー。ボカロでは「ミクリーモ」と呼ばれるスタイルで知られる。
キャプテンミライ(39歳)
インディーロック出身のボーカロイドP。身長186cm。
元々は商品説明文だった「LOiD」
―― さて、なんでビクターから、タイトルに「LOiD」と入ったアルバムが出るのかというお話です。
Image from Amazon.co.jp |
![]() |
---|
LOiD-01-LOiD’s LOGiC- |
村田 LOiD時代に「LOiD-01」「LOiD-02 postrock/electronica」と出したんです。それで「LOiD-03」も出すつもりだったんですが、レーベルがなくなっちゃった。今回たまたま機会があったんで、せっかくだからということです。
キャプミラ LOiD-03って、型番じゃなくてタイトルに付いているんですか?
村田 タイトルです。だから表1に「LOiD」って入るんです。
―― ビクターエンタテインメントの公式ページでも「AVEXグループ」の名前を出して、LOiDが説明されているんですけど。
村田 あれっ? 大丈夫なのかな、他社の名前入れてと思うんですが。ちゃんと確認取ってるのかなー? とか。

ビクターのWebサイトより。「LOiD」とは? の説明にAVEXグループの名前が。togetterリンクまで
―― 村田さんが押したわけじゃないんだ。
村田 元々は、商品説明文で書いたものだったんですよね。(ビクターのページに)LOiDに関するTogetterのURLも載っていますけど、あれをレコード会社の人に見せると、みんな「すごい」って言う。最近こんなレーベルなかったって。うれしかったのは「しんがー・そんぐ・らいてぃんぐ」というタイトルには何の反応もなかったのに、LOiD-03と付いた瞬間に「なんだってー!?」と言って買う人がいたことです。

この連載の記事
- 第164回 より真空管らしい音になるーーNutubeの特性と開発者の制御に迫る
- 第163回 超小型ヘッドアンプ「MV50」のCLEANは21世紀の再発明だった
- 第162回 欲しい音を出すため――極小ヘッドアンプ「MV50」音色設定に見る秘密
- 第161回 最大出力50Wのヘッドアンプ「MV50」は自宅やバンドで使えるのか?
- 第160回 新型真空管「Nutube」搭載ヘッドアンプのサウンドはなにが違う?
- 第159回 開発で大喧嘩、新型真空管「Nutube」搭載超小型ヘッドアンプ「MV50」のこだわりを聞く
- 第158回 唯一無二の音、日本人製作家の最高ギターを販売店はどう見る?
- 第157回 「レッド・スペシャルにないものを」日本人製作家が作った最高のギター
- 第156回 QUEENブライアン・メイのギターを日本人製作家が作るまで
- 第155回 QUEENブライアン・メイのギターは常識破りの連続だった
- 第154回 てあしくちびるは日本の音楽シーンを打破する先端的ポップだ
- この連載の一覧へ