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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第89回

新しい価値を示す「新しいiPad」は単なる3代目にあらず

2012年04月13日 13時00分更新

文● 西田 宗千佳

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 他方、こういった問題は「十分な解像度がある画像データ」では起きづらい。 自炊データや電子書籍の場合、iPadを横に持って「見開き」で見ると快適だ。解像度的にいえば、従来縦持ちにした時の解像度(1024×768ドット)が、横持ちの画面半分(1536×1024ドット)より小さい状態になり、ちょうど「文庫本を開いている」ような感覚になっていい感じだ。紙に近いサイズの、紙に近い解像度のディスプレーを使っているからこその感覚といえる。

 また、一眼レフで撮影した写真を、解像度を落とさずに見られるのもうれしい。さらに、巨大な画像データを使うアプリの場合も効果は絶大だ。第3世代iPadを手に入れて以降、暇を見つけては楽しんでいるアプリに、国立文化財機構が公開している「e国宝」という無料アプリがある。これは、国立博物館が所蔵する国宝や重要文化財を、高解像度撮影したデータで見られるアプリだ。驚くほど現実感のある写真が楽しめるのはもちろんだが、さらに拡大しても解像感が落ちないのがうれしい。電子書籍系だけでなく、この種の「美術系アプリ」や、iPhotoなどの「写真系アプリ」も、第3世代iPad向きといえる。

第3世代iPadで最大限の魅力を発揮するアプリ「e国宝」。国宝・重要文化財のディテールを、これでもかというほど楽しめて、しかも無料だ。ただし3Gではまったく太刀打ちできるデータ量ではないので、光回線+無線LANを推奨

操作感が「変わらない」ことこそが、最大の狙い

 逆にRetinaディスプレイを除くと、第3世代iPadの価値は驚くほどiPad 2と変わらない。サイズも見た目もほとんど同じ。ケース関連はごく一部、iPad 2に完全にぴったりとしたデザインのものははまらない可能性もあるが、厚みの差はそもそもごく少ないので、見比べないとわからないくらいである。約50gという重量の差も正確に比べればわかるけれども、「ひどく重くなった」という印象を受けるようなものではない。ぶっちゃけて言えば、カバンに入れてしまえば一緒だ。

第3世代iPadなのだが、こうやって単体で見ると、iPad 2との差はほとんど感じない。ディスプレーの色温度が下がったため、iPad 2に比べると黄色く見えるかもしれない

 ディスプレーの色温度はiPad 2に比べ下がり、より一般的な液晶ディスプレーに近づいたと思う。実用上は問題ない。アップル製品、特にiPhoneやiPadの場合、生産工場や生産時期、採用しているパーツの製造メーカーによって発色のばらつきがあるため、目の前にある製品だけでは結論を下しづらいのが実際のところだ。解像度の高いパネルに変えたためか、iPad 2のIPS液晶ディスプレーに比べて視野角による変色は、大きくなった印象を受ける。だがこちらも、それを欠点とあげつらうほど品質に問題があるわけではなく、「比べるとちょっと変わっているかな」という程度の話だ。

 動作速度やバッテリー駆動時間も、やはり同じような感じだ。大きな写真を次々と切り替えていくような動作をすると、iPad 2に比べて遅くなった印象を受けるのだが、それ以外の操作では、ベンチマークの数値くらいでしか差を感じない。バッテリーでの駆動時間も、普通に使うと短くなったとは感じない。

A5Xプロセッサー

 変わったと感じないこと、これはとても大切なことだ。解像度が4倍になっているにも関わらず、普通に使った時の感触が変わらないわけで、IT機器としては珍しい。第3世代iPadでは、SoCがGPU 4コアの「A5X」に変わり、メインメモリーの容量が1GBに増え、バッテリー容量が70%程度増えている。その性能向上分をほぼすべて、「いままでと同じである」ことに使っている、と考えてよかろう。

 逆にいえば、それが第3世代iPadの限界ともいえる。GPUコアが4つになったのであれば、ゲームなどで使う3Dグラフィック性能の向上が期待できそうなものだが、少なくとも現状は、それを感じることは少ない。テクスチャーやポリゴンモデルなどはiPad 2時代と同じもののまま、最終的な表示解像度だけが上がっているタイトルが多いためでもある。

 特にメモリー帯域の問題から、4倍の解像度(4K2Kクラスの解像度であり、ほとんどのパソコンやゲーム機の解像度より高い!)を満たせるだけの3Dグラフィックス能力を、第3世代iPadは持ち合わせていない、と考えるのが妥当だ。現在の用途でそこまでのグラフィックス性能を要求するソフト開発者は少なく、「スピードがあまり落ちない」程度で済んでいるのだから(それでもメモリー負担はかなり厳しいと聞く)、ニーズと性能のバランスはとれている、と見ていい。

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