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2年連続の女王戴冠なるか? 5年目のミクGTプロジェクト第13回

10年目の栄光! 谷口信輝、苦難のチャンピオンロード

2012年04月14日 12時00分更新

文● 末岡大祐/ASCII.jp編集部 ●写真/加藤智充、編集部

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何ものにも代えがたいチャンピオンの称号

──それでは、2011年シーズンをこのチームで走ってみて、いかがだったでしょう?

谷口 初戦の富士では雨が降ってる中、タイヤを変えたりなんだりで試行錯誤して5位だったでしょ。あの時点で結構イケるんじゃないかなという確信はありました。1戦目と2戦目は番場がとてもいい仕事してくれたので、僕の中での彼に対する信用・信頼も積み上がっていきました。セパンでちょっとラップタイムにバラつきがあったので、うーんって感じでしたがちゃんと1位で戻ってきたのでいいかなと思っていたら……。SUGOでGT500と接触しちゃって、ガクって感じでしたね(笑)。

──鈴鹿ではスリック劇場の先陣を切りましたが、そのときの胸中を教えてください。

谷口 11位とか12位とかノーポイントで終わるよりも、ギャンブルに出たほうがいいだろうと思ったからです。しかも、やるなら誰もスリックに履き替えていないときじゃないとギャンブルにならない。最初、僕がスリックで行こうと言ったとき、RSファインの河野さん(エンジニア)も反対したんですよ。でもあと2周くらいで番場がピットインしてくるってときに、河野さんも「よし行くか!」ってスイッチが入って僕も「見とけよ~!」って気合いが入って(笑)。

応援する側もヒヤヒヤだったスリック作戦。もし何かあったら……順位ではなく谷口選手のカラダが心配だったが、リスクをテクニックでねじ伏せ、GT500ですら舌を巻く速さで上位に迫った

──雨が上がったといっても、乾いている部分がライン一本分しかなかったですし、かなりリスキーでしたよね。谷口選手自身にとっても。

谷口 その乾いているラインは、他のクルマも走るからこっちはなかなか走れないんですよ。だから濡れているところをスリックで走らないといけなかったんでナーバスになりましたが、それよりも1ポイントでも多く取りたいという思いのほうが強くて。鼻から湯気が出る勢いで走ってたからね。そのおかげでなんとか5位まで挽回できて、自分としてはギャンブルに勝ったぞ! って。

──ドライブスルーペナルティーと、ちょっとイカちゃんに引っかかってしまったのが残念でしたね。

谷口 たらればになるけど、山内選手が周回遅れに気付いて譲ってくれてたら#11 ゲイナーは食えてたかもしれなかったので、ギャンブルには勝ったけど悔しかったですね。

ポイント圏外から5位まで上がったものの、うれしさよりも悔しさのほうが上回ったという。自他ともに認める“負けず嫌い王”が人目もはばからずに流した涙の価値は重い

──9月の富士ではホームコースですし、最初から優勝できると思っていましたか?

谷口 いや、優勝できるとは思ってなくて。ただ、ゲイナーに追いつくために大量得点を取らないといけないとは思ってましたね。かなりのウェイトハンデを背負ってたのにポールが取れたので、こりゃ行くしかないでしょ! とスイッチが入って、タイヤも良くなってたし、ミラーが見えなくなってしまった状況の中で番場がいい走りをしてくれたのもあって、完勝できましたね。ゲイナーがリタイヤになったのも、その後のチャンピオン争いに大きく影響しましたね。

──そう考えると、オートポリスの9位は厳しかったですね。

谷口 マシンの性格とコースが合わないというのもあるけど、なんか全然乗れてなかったよね。性能調整がガッツリで。番場節も炸裂してたし(笑)。ゲイナーが2位でうちらが9位になったことで、5ポイントも差が開いてしまって、やっぱり今年もチャンピオンは無理なのかな~とか考えてちょっと病んじゃって……。

JAF-GT勢の速さが光ったオートポリス戦。#11 JIMゲイナー 458が2位になったことで、ポイントランキングは逆転され、さらに5ポイントのビハインドを喫してしまった

──最終戦のもてぎが予選のときに雨だったことも、結構ヘコミましたよね。

谷口 金曜の搬入日にゲイナーはミケロット(フェラーリのレースカーの開発元)からエンジニアが来て、新品のエンジンを使うとか言ってるし、こっちは賞味期限切れてるエンジンだし、土曜日は朝から雨だし、もうどうすんだコレって(笑)。決勝は番場スタートで行かせて、彼がどんな順位で帰ってくるかで僕のやる気がどのくらい出るのか決めるわ、とか言ってヤサぐれてましたからね。

──しかし、予選日の練習走行でいきなりトップタイムでした。

谷口 あれ? って感じでしたよ。ゲイナー、ハンコック、ARTA(ガライヤ)あたりが上位に来るだろうと思ってたので。予選もポール取れたしね。こうなったら話は違ってきますよ(笑)。番場も乗れているし、こりゃ番場スタートだろ、と。1周目さえゲイナーを抑えられれば、あとはクリアな状態で走れるだろうし、もしダメでも僕がなんとかしてやる! と、俄然負けず嫌いが戻ってきて。そして、まさかのチャンピオンになれたという。感無量でしたね。

何度見ても感動的なチャンピオンの瞬間。すでに谷口選手はマシンの中で号泣していたとか

──番場選手への評価は変わりましたか?

谷口 ポカをやるし、天然だし、イラっとすることもあったけど、僕だけじゃチャンピオンは取れませんでしたし、番場の頑張りには非常に感謝しています。

SUPER GTは1人で走るレースではない。番場選手がしっかりと谷口選手にバトンを渡したからこそ、である

──ところで谷口選手はフォーメーションラップで、左右に振ってタイヤを暖めるウェービングをあまりしませんよね?

谷口 個人的には必要だと思ったことがありません。加速減速だけで、タイヤの端についている油をちょちょっと取るだけでいいんですよ。そもそもその前にウォームアップ走行があるし。むしろ(タイヤの)内圧が低いときにこじって壊したくないんです。加速したらリアタイヤが潰れる、減速すればフロントタイヤが潰れる。これだけで十分ですね。加速減速を繰り返すことによって、ブレーキを暖められるし。

──なるほど、そういう理由があったとは。さて、ついに10年越しのチャンピオンに輝きましたが、どんな気分でしたか?

谷口 僕のチャンピオンに関して、たかがGT300でしょ? とか、クルマが良かったんでしょ? とか言う人もいるわけですよ。でも僕は10年間悔しい思いをしてきて、取りたいのにあとちょっとが遠くて、僕の中では非常に重かったんです、この10年は。このチャンピオンは何にも代えがたいくらいうれしかったですね。自分の中で、何かが降りたような気がしました。

──では、最後に次のステップや目標はありますか?

谷口 正直、これといってないんだけど(笑)。ただ、僕は負けず嫌いで、勝負事に関してはなんでも負けたくないんですよ。だから、今年もチャンピオン防衛に全力を尽くします。そのために、速くてやらかさない、悪条件にも強い片岡選手を呼んできてもらったワケだしね。去年みたいにブッチギリのレースはできないと思うから、僕と片岡選手とでしぶとく食い下がって、安定したポイントを取ってチャンピオンを防衛しますよ!

 個スポのみなさんも、今年も応援していただいて、最終戦が終わったときに、僕らもありがとうと言いたいし、個スポのみんなからありがとうと言われるようなシーズンにしたいですね。

──ありがとうございました。今年も期待しています!

今年の相棒、片岡龍也選手と。チャンピオンコンビで、前人未踏の連覇に挑む!

【次回予告】チーム関係者インタビューの最後はあの人!

 現在、日本のレース界でトップレベルの谷口選手だが、チャンピオンまでの道のりは辛く苦しいものであり、ドライバースキルも一朝一夕で身につけたものではなかった。谷口選手が王者に輝いたのは運が良かった、クルマが良かったというのもあるかもしれないが、勝利への執念と、チャンピオンを諦めない心が、周りの人も動かし、そしてチーム一丸となって前に進んだからだった。

 さて、GSRチーム関係者インタビューシリーズもついに次回が最終回。最後はこのプロジェクトのキーマンであるグッドスマイルカンパニーの安藝社長が登場! 今年2台体制を決断したその胸中とは!?

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