カスタムイヤホン「FitEar MH334」を使ってみる
さて、これまでのページで取材編は終了。ここからはいよいよレビュー編だ。耳型採取から2週間経過し、カスタムイヤーモニターのMH334がやってきた。「T.Yotsumoto」というネームが入っていて、何だかカッコいい。
さっそく装着してみると意外や意外、もっとゴリゴリ押し込むものと思っていたが、耳に置いて少し力を加えると、シェル本体がするするっと勝手に入っていく。これは相当気持ちいい。そして両方の耳にシェルを装着し終わると、次の瞬間には別世界が待っているのだ。
その昔、初めて使ったエティモティック・リサーチの「ER-4S」にも驚愕したが、それをはるかに超える強烈な遮音性能だ。しばらく本当に何も聴こえない、無音の世界を経験することになる。これを装着した状態で外を歩くには、初代ウォークマンに付いていたトークボタン(マイクを経由して外の音が聴こえる)が必要じゃないかと思えたし、実際、中央線で電車を待っている際、電車の到着に気づかず乗り過ごしてしまったことが何度かある。
徐々に耳が慣れてくると、うっすらと環境音も聴こえてくるようになるが、この状態で聴く音楽は確かに今までとはまったく違って聴こえる。環境音のレベルが極端に低いため、何を再生してもやけにダイナミックレンジが広く、元気よく聴こえる。そして低域側の重量感がすごい。そうした印象を強くしているのは、レシーバー本体の分解能の高さもある。特に普通のイヤホンに比べて低域側をよく解像するので、ベースラインが他の楽音に埋もれず、かつ音程が取りやすい。おかげでベースの耳コピーがすごくやりやすいという、実用的なメリットもあった。
ただ、カスタムのイヤーモニターは、耳穴にフィットして、激しく動いても外れないというメリットがある代わり、外す際にはコツを要する。シェルの下側に切り欠きが付いていて、そこに爪を引っ掛けて引き上げると簡単に抜けるのだが、普通のイヤホンに慣れていると、うっかりまっすぐ引っ張って抜けずに慌てる、という場面が何度かあった。
遮音と同時に素晴らしいのが装着感の良さだ。カナル型イヤホンの場合、遮音性と装着性はトレードオフの関係にあり、遮音が良いものほど耳に痛みを感じるものだが、そういうことは一切ない。実際に試してみたが、確かに丸一日装着したままでも、何の違和感もなかった。おかげでオーバーヘッドのヘッドホンを使わずイヤモニで聴くようになった。取材時に須山補聴器に来られ、MH334のオーナーになったギタリストの[TEST]さんも同じような印象らしい。実戦投入の印象についてちょっとだけ聞いてみた。
―― ご無沙汰しています。もう実戦には投入済みですか?
[TEST] 実際にライブでMH334を使用しました。普段、足元のモニターから出る音はステージ上のアンプやドラム、別のモニターから出る音が混ざって、輪郭がぼやけがちになります。イヤモニは耳元で鳴るモニター音以外、外の音はミュートされるので、本当に必要な音だけ聴けます。
―― 使い心地について教えてください。
[TEST] MH334はドライバーが4つ入っているので、それだけモニター音がリアルに、より高音質に聴くことができます。レコーディングでも使用しましたが、通常不快に感じるヘッドホン装着の締め付けもなく、非常に快適にレコーディングできます。一度使用するともう従来の環境には戻れませんね。
最後は何か宣伝めいているが、実際その通りで、なかなか他のイヤホンを使う気にはならない。が、しかしである。
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