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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第91回

14万でも納得!耳型から作るイヤホン「FitEar」がすごい

2012年04月07日 12時00分更新

文● 四本淑三

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ユニバーサル版「FitEar TO GO! 334」を使ってみる

 カスタムは確かにウワサ通りすごかった。では、同じ構成で作られた、ユニバーサル版の「FitEar TO GO! 334」はどうなのか。価格はもちろん絶対的には高いが、カスタム版が15万円ほどするのに対し、10万円前後とちょっとリーズナブルな設定になっている。

 カスタム版との違いは、もちろん耳型を採らずにイヤーチップを使う点。カスタムとの比較では、やはりイヤーチップが耳穴を圧迫するせいか、ごく薄く血液の流動音を感じる。が、フィット感そのものは、カナル型としてはかなり良い。シェルの形状も、カスタムの経験から割り出したものだそうで、ドライバーが計4個も入ったシェルにしては小ぶりで、私の耳にも違和感は少なかった。

カスタム版のMH334と同様、ケーブルは着脱式。ただし細部は若干異なる。耳にかかる部分は柔軟な形状記憶チューブで覆われていて、ケーブルの曲がりを調整できる

 音質的な傾向はカスタムに近いが、まったく同じではない。特に体感できるのが低域の差。ウーファーが担当するごく低い帯域は、TO GO!のほうが強く感じられる。これは遮音性がカスタムより落ちることを考慮してのチューニングのはずで、おそらく騒音環境下ではマスクされてしまうはずだ。

 カスタムとの価格差5万円は、やはり遮音性能の違いと、装着快適性の差ということになるのではないか。このFitEar TO GO! 334は、東京・中野のフジヤエービックで先行販売が始まっていて、5月12日に開催予定のヘッドホン祭りに合わせて本格販売開始というスケジュールのようだ。

 そこでお店やお客さんの反応はどうか。同店ヘッドホン担当の根本圭さんにお話を伺った。このお店にはヘッドホン、イヤホンが大量に展示されているほか、中古の買取・販売。高級イヤホンの試聴もできる。

フジヤエービック ヘッドホン担当 根本圭さん

―― どうですか、FitEar TO GO!の売れ行きは?

根本 すごいですよ。この価格のものがこんなにっていう。カスタムのMH334が出た時の反響はすごく大きかったんですが、様子見の方が多かった。元々高価ということもありますし、カスタムということで若干敷居が高い。それがユニバーサルになって手を出しやすくなったのと、(好みに合わず)失敗してもウチみたいな中古のショップに売ればいいので。

―― カスタムは中古の買取は無理ですもんね。他と聴き比べてどうですか?

根本 私もカスタムの334を持っているんですが、低域や高域はユニバーサルの方が強調されていたりしますね。334のカスタムの方を持っていても、これは欲しいと。

FitEarユニヴァーサル版もかなりの売れ行きという

―― ヤバいですねそれは。他の同価格帯の製品との比較ではどうでしょう?

根本 TO GO!を試聴される方は、AKGのK3003も聴かせてくださいという方が多いです。聴かれた方がおっしゃるのは、音の傾向が違いますので、どちらが良い悪いではなく、より自然に静かに聴けるのがK3003、楽しく激しく聴けるのがTO GO!みたいに言われます。

―― アルティメット・イヤーズ、K3003、FitEars TO GO!は音域によって別のポートを設定しています。そういう差異は感じられますか?

根本 どの形がベストかまでは分からないんですが、バランスド・アーマチュアのマルチドライバーのものは、それぞれの音域がバラバラに聴こえてしまう、一体感が出る出ないというのがあるんですが、そこは各メーカーさん、かなり苦労されているんだろうなとは思います。

 私はひょんなことから、いきなりカスタム版を経験することになったが、もし店頭でTO GO! 334を試聴するか、実際に購入して気に入ったのなら、MH334のオーダーを検討してしてみるべきだと思う。耳型の採取からスタートする、まったく新しいオーディオ体験が待っている上に、TO GO! 334との違いも楽しめる。

 構造の違いから来る演出とはいえ、マニアというのはそういう微妙な差異に弱いもので、これは実に罪作りな商品構成ではないかと思った。要するに私もヘッドホンマニアの端くれとして、TO GO! 334が欲しくて、正直かなり困っているのである。



著者紹介――四本淑三

 1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。

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