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EU、Motorolaも特許乱用で調査に MSとAppleの苦情が背景

2012年04月05日 19時00分更新

文● 末岡洋子

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 欧州委員会(EC)は4月3日(ベルギー時間)、Motorola Mobilityに対しEU競争(独占禁止法)違反の正式調査を開始することを発表した。必須技術特許についてMotorolaのライセンス慣行など2件を調べる。

今回の争いは
Motorola Mobility vs Apple&Microsoft

 ECの調査は、AppleとMicrosoftによる苦情を受けてのもの。Motorolaは、ドイツでAppleとMicrosoftをそれぞれ自社特許侵害で提訴している。Appleに対しては無線通信、Microsoftに対してはH.264関連の特許を主張している。Microsoftは2月にECに対する苦情申し立てを行なった際、MotorolaがH.264関連の50件の特許に対して要求するライセンス料(特許使用料金)は、他社の1000倍以上と主張していた

 焦点はMotorolaが保有するFRAND特許となる。FRANDとは“Fair, Reasonable, And Non-Discriminatory(公平、合理的、かつ非差別的)”の略で、製品やサービスの構築に不可欠な必須技術についての特許についてはFRAND条項でライセンスすることになっている。

詳細は欧州委員会のサイトで確認できる

 Motorolaは2G/3Gの無線通信システム、H.264による動画圧縮技術、無線LANなどの分野で必須技術特許を持っており、標準策定団体に対しFRAND条項でライセンスすると約束しているが、それに従っているかどうか、独占的立場を乱用してEU競争法に違反していないかどうかを調べる。

 具体的には、(1)「iPhone」「iPad」などのApple製品、「Windows」「Xbox」などのMicrosoft製品に対して、自社の必須技術特許を根拠に差止めを求めていないかどうか、(2)Motorolaが必須技術特許のライセンスにあたって、AppleとMicrosoftに対し不公平な条件を課していないか、の2点を調査する。

 FRAND特許については、ECはすでに2012年1月末に、Samsungに対し同様の調査を開始している。EUは2月中旬にGoogleによるMotorola買収を認めたが、その際に特許権の乱用などについて注視していくことを付記していた。ECは必須技術特許の利用について反競争的な懸念の偏見なしに買収を承認した、と記している。

 なお、Microsoftはその直前、欧州の製品流通拠点をドイツからオランダに移行させることが明らかにしている。これはドイツで進行中の対Motorolaの特許訴訟の動向を懸念してのもので、差止め令が出た場合の影響を免れるためという。ドイツのマンハイム地方裁判所は4月17日に、この件について判決を下すことになっている。ドイツではすでにSamsung「GALAXY Tab 10.1」など販売差止めとなった製品がある。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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