仕組みは単純だが、細部まで86にこだわったアプリ
そしてトヨタ初のFacebookとの連携
──ユーザーからの「I am “86”」に対する反応はいかがですか?
喜馬 まだ数は多くないのですが、僕らが予期していなかった遊び方が生まれているらしいですね。一番多かったのは助手席で遊ぶという人ですね。ドライバーじゃなくてもドライバー気分が味わえるのだと思います。
──排気音やメーターなども本格的ですよね。
喜馬 排気音とクラクションは実際に86から録音していますし、メーター類も86そのままです。パッシングもできますし(笑)。これが世界に広がってくれればいいなと思っています。Facebookで自分の動画をアップすることもできるので。
──86のプロモーションサイトがFacebookと連動しているのも話題です。
喜馬 ここまでFacebookのファンページと連動して展開しているのは、トヨタ史上初でしょう。SNSとの連携は他の車種でもあったんですけど、さすがに86みたいにはならなかった。ファンページで「いいね」を押すとそれが公式サイトに表示されるという試みは、今までありませんでした。
──Facebookと連動させようと思ったキッカケは何だったのでしょうか?
喜馬 とにかくスポーツカーファンが楽しめる場が欲しかったんです。そのためにはSNSはうってつけのツールで、Twitterも考えたんですけど、より仲間意識が高まるのはFacebookだと判断しました。僕らとしては、プロモーションというよりサービスに近いですね。同じ車種に乗っている仲間同士で“ツルむ”ということが楽しみのひとつにもなるはずだし、それをサポートするサービスとして、SNSはスポーツカーにおいては非常に重要な位置を占めています。Facebookは実名なので、信頼関係も結びつきやすいのではないでしょうか。現在、「いいね」の数は8000くらいあります。
──たしかに、スポーツカーに限ったことではないかもしれませんが、クルマ好きってオーナーズクラブに入ったり、仲間同士でツーリングに出かけたりしますよね。
喜馬 86が4月6日に発売されますけども、そこからFacebookのアカウントを持っている方のコミュニティーをスタートさせようと思っています。これは86オーナーはもちろんですが、オーナーではないけど興味があるという人も参加できます。
──オーナーでなくても参加できるのは、懐が広いですね! ところで、86自体にはネットとの連動機能みたいなのはあるのでしょうか?
喜馬 あります。CAN-ECUというシステムがありまして、走行データを採取するデータロガーみたいなものなのですが、このデータを86からダウンロードして、PS3用ゲームの「グランツーリスモ5」で実車と同じように走らせることができます。例えば筑波サーキット走ったデータをグランツーリスモ5で読み込んでリプレイを見たり、ゴーストデータとして友達や自分の操作するマシンとタイムアタックをしたりすることもできます。
ちなみに、このCANという規格はトヨタだけじゃなくて、いろんなクルマで使われています。アクセル開度だとか、ブレーキの制動、左右のロールやヨーをすべてデジタルデータ化しているシステムなんですが、それを抜き出す仕組みを開発中です。コースをトレースするのはGPSで追っているんですが、コーナーをどのように曲がっていったのかは、データとして残るわけです。ゆくゆくは仲間同士でデータの交換なんかもできるようにしていきたいですね。
──なんだか、すごいことになってますね……。グランツーリスモ5との連動は面白そうです。実際に走るのと、ゲームの中で走るのではどのような差が出るのか興味がありますね。データの抜き取りはどうやるんですか?
喜馬 USBメモリーですね。それをPS3に差し込んでグランツーリスモ5に読み込ませるというシステムをポリフォニーさんと制作中です。そのうちBluetoothなどでも抜き取れるように、そちらも視野に入れており、この一連のデータ抽出方法はオープンプラットフォームで進めています。
──このようなデジタルカルチャーの入り口にあるのが、「I am “86”」なんですね(笑)。
喜馬 そうです(笑)。クルマを買わなくても自分の足で体験できますから。