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オンライン地図業界の変動とGoogle Maps

アップル参戦! 「OpenStreetMap」をめぐる“地図戦争”

2012年04月05日 11時00分更新

文● 鈴木淳也(Junya Suzuki)

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今後の影響は? 代替手段の模索と移行

 「皆が慣れきったころに、無料のサービスを一気に有料化する」という手法を含め、根幹となるサービスインフラを1社に依存することに対して、警戒する声は多い。先方の都合で急にルールを変更されたり、最悪のケースではサービスそのものが停止してしまう可能性があるからだ。Foursquareの場合は「カスタマイズ可能なより柔軟な選択肢」というのが新システムへの移行へのモチベーションとなったようだが、今後もこれを機会にGoogle Maps以外の選択肢を模索して、サービスを移行する事業者は出てくると予想される。

 Googleが有料化を発表する以前に、Bing Mapsなどの代替サービスにスイッチした事業者もいくつかある。GPSナビゲーション大手のGarminが約1年前にGoogle MapsからBing Mapsへの乗り換えを完了したほか、AAA(米国版JAFにあたる組織)の「TripTik」(日本からは購入不可)というアプリがBing Mapsベースに移行している。

 Digital Trendsは、このほかにもいくつかの事業者がGoogle Mapsの代替手段を模索していると報じている。また、MapQuestが外部利用を促進するためのモバイルAPIの提供を開始したことにも触れ、代替手段が増えつつあることを示唆している。

 実際、Programmable Webによれば、大手を含め多数の代替手段がウェブ業界にはすでに存在しており、筆者も知らなかったようなサービスが多数あることに気付かされる。もっとも、Google Maps APIのマッシュアップ数をみれば分かるように、実際の活用や事例はGoogle Mapsが最も進んでいるわけで、この状態が均質化されるには、かなりの時間や労力が必要だと考えられる。

 また、こうした中で登場してきた有力な選択肢が「OpenStreetMap」ということになる。同団体は英国をベースとしたNPOであり、その目的は誰もが使える地図データや地図パーツを提供することにある。あくまで基礎データなので、これを使ってどのような実装するかは、各サービス事業者に委ねられている。実際、クレジットを確認しない限りは、前述のFoursquareがOpenStreetMapのデータを利用しているのかどうか分かりにくい。今後も、Foursquareと同様の形でOpenStreetMapを自社サービスに組み込んでくる例は増えてくるだろう。

OpenStreetMap、Poly9、C3 Technologies

 これら動きと並行して興味深いのが、アップルの動向だ。同社が以前にPlacebaseという地図サービス企業を買収したことが判明したとき、「Google MapsをはじめとするGoogleサービスからの離脱」がまことしやかにささやかれた。ちょうどGoogleがAndroidでのシェアを増しつつあり、アップルとの関係が険悪になりつつあったといわれ始めたころだ。ただこのときアップルは、Googleとの提携関係を引き続き強調し、iOSデバイスからGoogle関係のサービスを外すこともなかった。

 ところが実際には、アップルは水面下でサービスの内製に向けた準備を進めており、2010年にはPoly9というGoogle Earthライクな製品を開発する会社を、また2011年10月にはC3 Technologiesという企業を買収している

 C3の技術は2Dの地図と3Dの地図を互いにマッピングさせるもので、その詳細は動画映像も含めて9 to 5 Macが報じている。

 Placebaseが前述のOpenStreetMap+MapBoxに該当するものだとすれば、Poly9とC3 Technologiesの技術はGoogle Mapsを大きく超えた表現力を持つもので、アップルはさらに上の地図サービスを目指している可能性がある。iPhotoアプリの地図機能がその前哨戦というのは少々頼りない気はするが、同社がGoogle Mapsへの依存を解消し、さらに上回るアプリやサービスを提供する計画があると考えると非常に興味深い。Placebase買収から2年半以上が経過しており、その意図が明らかになるのもそう遠くない未来のことかもしれない。


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