このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

本格的なID社会の到来がもたらすメリットとは何か?

共通番号制度について、今伝えなければいけないこと

2012年04月04日 09時00分更新

文● 八木晃二/野村総合研究所 DIソリューション事業部長
聞き手●山口学

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 4月2日に発売される「完全解説 共通番号制度」(アスキー・メディアワークス刊)は、「社会保障と税の一体改革」の中でも特に重要視されている共通番号制度について、最新の情報とともに現状を緻密に整理した一冊だ。なぜ今、本書が必要なのか?どのような課題があり、その解決策とは何か?について、著者である野村総合研究所の八木晃二氏に話をうかがった。

共通番号制度を巡る背景と経緯

八木晃二著「完全解説 共通番号制度」(アスキー・メディアワークス刊)

 共通番号制度についてはこれまで長い期間をかけて議論が進められてきました。国民総背番号制度や住民基本台帳ネットワークシステムなど、さまざまな検討がなされ、あるいは実施されてきました。とりわけ、2011年6月に「社会保障・税に関わる番号制度」の大綱が発表されたことを契機に、共通番号制度についての議論が高まっています。2012年2月には「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案(マイナンバー法案)」が閣議決定され、政府は2015年からの運用開始を目指すとしています。

 ただ、ここで注意しておかなければならないのは、今回のマイナンバー法自体は、あくまで社会保障と税の一体改革という目的のための法案だということです。つまり、名寄せ(各情報保有機関が保有する個人のデータの関連性を突き止める行為、本書23ページ参照)をつくる仕組みであって、共通番号制度全体のはじめの一歩にすぎないわけです。この点を理解していないと、今後の共通番号制度の制度設計において全体像を見誤ることになりかねません。

 マイナンバー法について言えば、今後の日本の政治的工程として、消費税増税という大きなマイルストーンがありますし、増加する社会保障費を抑えながら社会保障サービスをどう充実させていくのかといった課題もあります。より公平公正な社会を実現していくためにも、今こそ共通番号制度について課題や解決策を包括的に整理しておく必要があるのです。

身元証明のための制度設計も重要

 本書では身元証明についても触れています。2011年3月11日に発生した東日本大震災では、身元確認の手段がなかったために、金融機関での臨時現金払い出しなどの身元確認が必要な業務に多くの時間を要しました。常に最新の状態に更新してある身元証明書に同期した情報がセンターにあれば、証明書そのものがなくても照合は可能です。情報が一元管理できていれば、震災後の身元確認作業ももっとスムーズに進んだのではないでしょうか。

 また、現在の日本において、「身元証明書制度」に則った身元証明書というものはなく、その代わりとして運転免許証やパスポートを使用していることを、読者の皆さんをはじめ、多くの国民が何となくアバウトに認識しているのが実情です。

 例えばパスポートには券面番号が印字されていますが、この券面番号は個人に割り振られた番号ではなく、あくまでパスポートそのものを管理するために符番してあるだけなのです。国民の大多数の方々が、パスポートにある番号は、券面を管理するためにパスポートに振られた券面番号ではなく、国民各個人に振られた番号だと勘違いされていると思います。この例のように、個人に振る番号と身元証明は本来、関係性はありません。こういった誤解を一つひとつ明確化したうえで、共通番号制度の議論を正しく進める必要があります。

 本来、共通番号制度と身元証明問題は別々に議論されるテーマであるはずなのですが、現在、一緒くたにされており、これも共通番号制度への誤解を生んでいる原因だと考えています。本書では、その役割の違いを明確にし、国民にとって本当に有益な制度設計とは何かについて解説しています。

■Amazon.co.jpで購入

前へ 1 2 3 次へ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ