われらAW設定研究会(後編)
『アクセル・ワールド』気分を味わうには300BPMの曲を聞け!?
2012年04月06日 17時00分更新
人間の脳は常に過去を認識している
―― そういえば《ブレイン・バースト》による意識の加速についてはまだ話していないような……心臓からのパルス信号を《ブレイン・バースト》によって通常の1000倍の速度に加速させ、脳に送り込むことで、わずか1.8秒を30分に感じられる、というものです。
野口 「脳が通常の1000倍にクロックアップしている。でもそのためには、脳細胞が通常の1000倍の速度で反応しないといけないよね。主人公のハルユキや黒雪姫など《ブレイン・バースト》をインストールできる人たちは、もともと思考スピードが速い人たちなのでそれに耐えられるという設定ですが……」
遠藤 「単に脳の活動を速めるのだとしたら、これはちょっと難しい。冒頭で喋った神経回路の信号の伝達速度には限界があるから。非常に素朴な回路なんですよ。信号を送るために一度電気を帯びると、しばらく反応しなくなる。極端な話、僕らが見ている世界は過去なんですよ。神経がものすごくゆっくり処理してるから」
野口 「過去と言っても1ミリ秒以下ですけどね。まあ、人間の網膜は凸レンズなので、逆さまに映ったものを脳内で変換する時間だって存在すると思えば、人類全員が過去を見ていると言ってもいいでしょう」
遠藤 「そんなこともあって、脳細胞の動きをスピードアップすることはいま我々が想像しうる範囲の方法では実現が難しいと思うんですね。もし処理能力が上がるとすれば、それはクロックを速める方向じゃなくて、マルチタスクというか、伝達物質を過剰に与えて――それこそアンフェタミン投入時のように――活性化して多くの脳細胞が働いている状態を作るという方向性なんじゃないか?
今のコンピューターみたいにインストラクションポイントを1個ずつやっているわけじゃないので、同時多発で活性化すれば処理能力は上がるはず」
野口 「超並列のアイデアですね。ただ、それって肉体に負荷がかかり過ぎですよ。活性化するためにアンフェタミン投入なんてのはもってのほかです(笑)」
《ブレイン・バースト》したければ300BPMの曲を聴け!?
遠藤 「ただね。人間って時間を相対的にしか認識できないけど、なんとなく1秒ってわかるよね。厳密にはカウントできないにしても、時間感覚を持っているのはなぜか。
それは肉体があるからだと。例えば、腕を振ったりすることで1秒を計れたりする感覚ってあるよね。そういった肉体を動かすことで物理的な法則から得られた経験から時間の概念を何となく具象化して捉えているらしい。
人間の脳が身体的なものからしか時間の概念・感覚を得ていないとするなら、常に動いている心臓がベースクロックになるというアイデアは冴えた説得力があると思う。そういえば、池谷氏の本には、脳を活性化させたかったら5ヘルツの音を聴けと書いてありました」
野口 「5ヘルツだと0.2秒、1秒間に5拍……300BPM(1分間に300拍)かあ」
―― 現実世界で《ブレイン・バースト》したければ300BPMの曲を聴けと。
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