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日本は研究開発とブランド構築に専念せよとのメッセージも

出資額は669億円 シャープ、鴻海グループと業務提携を発表

2012年03月27日 20時03分更新

文● 小西利明/ASCII.jp編集部

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鴻海グループとの協業について発表する、シャープ次期社長の奥田隆司氏

 シャープは27日、エレクトロニクス分野では世界最大手のEMS(受託生産製造サービス)事業者である鴻海(ホンハイ)グループとの業務提携を発表。同グループに対する第三者割当増資による新株の発行を行なうことで合意した。これにより、鴻海グループ全体ではシャープの株式数の10%強を保有する、事実上の筆頭株主となる。

 会見を行なったシャープ次期社長の奥田隆司氏(常務執行役員 海外事業本部長)は、従来までの液晶パネルの研究開発から生産、さらにパネルを使ったテレビなどの製品までを自前で手がける事業形態の見直しが必要であると述べ、鴻海グループとの協業により、鴻海の生産技術やコスト管理によって、魅力的な商品やサービスをタイムリーに市場に投入できるとした。

 鴻海グループとの提携では、まず堺市にある液晶パネルの生産拠点「シャープディスプレイプロダクト(株)」(以下SDP)に対して、鴻海グループ会長の郭 台銘氏や投資法人による出資が行なわれる。出資はシャープが保有するSDPの株式を鴻海グループに譲渡する形で行なわれ、これによりSDPの出資比率は、従来はシャープが約93%、ソニーが約7%だったところを、シャープが約46.5%、鴻海グループが約46.5%に変更される(ソニーの出資比率は継続)。

 そして堺工場で生産される液晶パネルの、50%を鴻海精密工業が引き取り、テレビやディスプレーなどのODMビジネスに利用する。これにより、現在は減産により稼働率が低下しているという堺工場の稼働率を100%まで引き上げることにより、コスト力強化と収益性改善を図る。パネルの引き取りは2012年度から行なわれるとのことで、会見中には10月以降から引き取り開始との説明もあった。

 鴻海グループによる出資は、シャープ本体に対しても行なわれる。冒頭で述べたように、シャープは今後、鴻海グループに対して第三者割当増資による新株の発行を行なう。これにより、シャープは金額にして約669億円程度の資金を調達する(費用を除く差引手取概算額は約664.7億円程度)。増資先は鴻海グループの中核企業である鴻海精密工業のほかに、FOXCONN(Far East) Limited社など計4社。4社合計での出資比率は9.88%に達し、単独では筆頭株主である日本生命(出資後4.52%)を下回るものの、グループ全体では10%近くを占める筆頭株主となる。

 なお、今回の提携によりシャープのテレビ事業の縮小や生産施設の閉鎖、人員削減などは検討していないと奥田氏は強調した。

日本は研究開発とブランド認知の構築に専念せよ

ビデオメッセージを寄せた鴻海グループ会長の郭 台銘氏

 会見の中では、鴻海グループ会長である郭 台銘(Terry Gou)氏によるビデオメッセージも上映された。提携の事実と両社の協業による利点を述べる、この種の会見では一般的なものだったが、その中で驚くようなメッセージが飛び出した。大変興味深いメッセージなので、スクリーンに表示された日本語訳をそのまま載せよう(読点のみ追加)。

 「日本が、かつての電子機器やコンシューマエレクトロニクスの製造者としての役割から脱却し、高度なテクノロジーの研究開発と国際的なブランド認知の構築を先頭に立って牽引する、新しい役割を引き受けていくことを世界に対して示すことになるでしょう」

 簡単に言えば、「製造は任せて、日本は研究開発とブランド構築に専念していきなさい」ということだ。世界最大のエレクトロニクス製造業である鴻海グループのトップの発言だけに、その言葉には重みがあるとともに、日本のエレクトロニクス産業に対する世界の見方の一端を示すものであろう。

 27日の会見では、シャープと鴻海グループの提携により、今後どのような展開をしていくかについては明言されなかった。5月にそれらも含む経営方針の説明が予定されているようなので、シャープの今後が示されるのはもう少し先のこととなりそうだ。

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