3月26日、ノベルは「SUSE Linux Enterprise 11 Service Pack 2」の提供開始を発表した。SP1からのマイナーバージョンアップではあるが、カーネルが2.6.32から3.0に更新され、Solarisが持つ機能を実現するなど意欲的な製品となっている。
SUSE Linux Enterpriseのバージョンアップは、バージョン番号が上がるメジャーアップデートとService Packが提供されるマイナーバージョンアップの2種類が行なわれてきた。マイナーバージョンアップでは、アプリケーションの動作がノベルの責任において保証されているが、メジャーアップデートは保証までは行なわれない。一方、Linuxの中核であるカーネルのアップデートはメジャーアップデートの際のみの行なわれてきた。保証がない代わりに、大きな改良が行なわれるわけだ。
この方式の場合、カーネルが変わらないため既存アプリケーションの安定性は確保されるが、新機能の追加が難しくなる。製品出荷後に登場する新機能は新しいカーネル向けに開発されるため、それを取り込むには古いカーネル向けに移植する「バックポート」が必要となるのだ。カーネルは3カ月単位で更新されるため、バックポートの困難さは徐々に増してしまう。
こうした状況を変えるためにSUSE Linux Enterprise 11 Service Pack 2が採用したのが、マイナーバージョンアップの段階でのカーネルの更新だ。SUSE独自の開発手法「Forward Looking Development Model」と組み合わせることで、アプリケーションの互換性を維持したまま頻繁にカーネルの更新を可能にしたのだという。ユーザーからすると、カーネルが更新され新機能が利用可能になるが、メジャーアップデートではないのでアプリケーションの互換性が保証される「一挙両得」な方式といえるだろう。
このような経緯でカーネル3.0を採用することで、SUSE Linux Enterprise 11 Service Pack 2は、インテルのSandy BridgeやAMDのBulldozerのようなCPUやUSB 3.0といった最新ハードウェアへの対応が可能となる。さらに、マルチプロセッサのスケールアップの妨げとなってた「BKL(Big Kernel Lock)」の除去、アプリケーションのパフォーマンスを向上させる「Huge Pages」にOS側で対応させる「THP(Transparent Huge Pages)」、TCPのパフォーマンスを上げる「initcwnd initrwnd」の搭載などが行なわれる。また、仮想化関連では、Xen 4.1とKVN 0.15+に対応。KVMではゲストOSとしてWindowsが正式サポートされた。また、複数のLinuxを実行する「Linux Container(LXC)」もサポートする。
SUSE Linux Enterprise 11 Service Pack 2の目標の1つが、オラクルによる買収でごたつきが生じているSolarisユーザーへの売り込みだ。ファイルシステムには、「Copy On Write」サポートによるスナップショットやチェックサムに対応する「btrfs(バター・エフエス)」を採用。Solarisのファイルシステム「ZFS」と同様の機能を提供する。また、トレーサー機能の「LTTng(Linux Trace Toolkit Next Generation)」が機能拡張として提供予定だという。
SUSE Linux Enterprise 11 Service Pack 2は、基本製品となる「SUSE Linux Enterprise Server 11 Service Pack 2」に加え、
- SUSE Linux Enterprise for System zSystem z(IBMのメインフレームSystem z用)
- SUSE Linux High Availability Extension(異なる国や地域など遠隔地のサーバー間でクラスタ構築が可能な拡張機能)
- SUSE Linux Enterprise Virtual Machine Driver Pack
- SUSE Linux Enterprise Server for VMware(VMware vSphere上でSUSE Linux Enterprise Serverを展開するOEM製品)
- SUSE Linux Enterprise Server for Amazon EC2(Amazon EC2上で稼働するソリューションで、従量課金による利用が可能)
- SUSE Linux Enterprise Desktop 11 SP2(Windows、UNIX、Macとの共存を念頭に開発された、相互運用性の高いデスクトップOS)
が提供される。販売はパートナー経由で、価格はSUSE Linux Enterprise Server 11 Service Pack 2の想定価格が9万5880円から。
なお、次期メジャーバージョンアップ製品である「SUSE Linux Enterprise 12」は、2014年提供予定だ。
