RADEON登場までのつなぎに
デュアルGPUのRage Fury MAXXを開発
長い前置きが終わったので、ようやく本題に入ろう。Rage 128 Proに続いてATIは、のちにRADEON 256として投入される「R100」コアの開発を進めるが、これが予想外に難航してしまう。ところが競合するNVIDIAは、いち早く「GeForce 256」を投入。また、S3がDirectX 7対応の「Savage 2000」を開発している話も早くから聞こえてきていた。これらに対抗するための“つなぎ”製品が、ATIには必要だった。
そこでRage 128 Proをカード1枚に2個搭載して、AFR(Alternative Frame Rendering)を使って描画性能を倍増させるという、よく言えば意欲的、悪く言えば無茶な製品が登場する。それが「Rage Fury MAXX」であった。
どの辺が無茶だったかと言うと、チップの接続方法が本来やってはいけない構造になっていたことだ。例えば図1のような構成の、ごく当たり前のグラフィックスカードがあるとする。GPU自身がAGPやPCIのインターフェースを内蔵しており、これを使ってマザーボードと接続するという仕組みだ。
図1 一般的なAGP/PCIインターフェース内蔵のグラフィックチップとグラフィックスカードの接続方法
このGPUを2つ、1枚のカードに載せたいと思ったらどうするか? それは図2のように、ブリッジチップを介して2つのGPUを接続することが必須となる。これはPCIの仕様が、原則として1スロットにひとつのデバイスしか接続されないという前提で、初期化あるいはアクセスを行なうためだ。だが、その例外として「ブリッジチップが入った場合のみ」と規定されているので、こうした方式が必須となる。
図2 図1のグラフィックチップを1枚のカードに2つ載せる際の実装例
例えば、図2のケースでGPU #2に何かさせようという際に、チップセットから見るとGPU #1とGPU #2は同じスロットに刺さっているので、区別が付かない。そのうえGPU #1とGPU #2は同じI/O空間を共有することになるので、ブリッジチップを介さない構成でCPUからデータを書き込もうとした場合、同時に両方のGPUにデータを書き込むことになる。逆に、GPUから何かデータを返す場合も、両方が同じアドレスでデータを送り出すから区別できない。こうした問題を回避するために、間にブリッジチップを挟むわけだ。
ところで、図2にAGPと書いていないのは意図的なものだ。AGPはブリッジチップをサポートしていなかったからである。AGPはベースが66MHz/32bitのPCIバスなので、理論上はブリッジが使えるはずである。ところがAGPで拡張された「Side Band Addressing」や「GART」(Graphics Address Remapping Table)といった機能は、複数のGPUがブリッジ経由で接続されることを考慮していない。これらをサポートすると、プロトコルや機構が複雑になりコストが上がるからだ。

この連載の記事
-
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 -
第844回
PC
耐量子暗号対応でセキュリティ強化! IBMのPower11が叶えた高信頼性と高速AI推論 -
第843回
PC
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する? -
第842回
PC
双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細 -
第841回
PC
Gen1で3倍、Gen2で14倍の帯域幅を実現! Celestial AIのPFLinkがネットワークスイッチを劇的に進化させる -
第840回
PC
Avicena Techが最新MicroLED光チップレット技術を公開! 2027年製品化に向けた新たな光インターコネクト戦略 -
第839回
PC
長距離伝送も安心! 1kmを3dBの損失でクリアするPassageの驚異的な光通信性能 - この連載の一覧へ











