ViRGE/DXでも性能向上は少なく
ViRGE/GX2ではウルトラローエンド扱いに
ViRGEの登場した1995年は、Renditionの「Vérité V1000」が登場した年でもあり、NVIDIAの「NV1」やATIの「3D Rage」、Matrox「Mystique」といった、競合製品が登場した時期である。翌1996年には、NECの製造による「PowerVR PCX1」とか3dfxの「Voodoo Graphics」なども登場している。これらと比較してViRGEの3D性能が低かったのは、さすがに問題であった。
NV1はDirect 3D非対応だったものの、NV1に最適化した「バーチャファイター」が存在した、という一点で救われていた。ViRGEにはその救いもなかった。S3は自社の3Dエンジンに最適化した「S3d」というAPIを同時に提供したが、これに対応したゲームはそう多くなかった。有名どころでは、初代の「Tomb Raider」と「Descent II」、日本ではポピュラーではなかったが、アメリカではそこそこ有名だった「Terminal Velocity」や「MechWarrior 2」が、S3dに対応していた。しかしこれらのゲームは、S3d以外の最適化バージョンも提供したから、「バーチャをやりたければNV1しかない」といった話にはならなかった。
これを“若干”改善したのが、次の「86C375」こと「ViRGE/DX」である。もっとも改善といっても、主な違いは動作周波数程度。ViRGEが50/55MHzだったのが、ViRGE/DXでは50/66MHzになった。そのほかにエンジンを「S3d Graphics Engine」から「Improved S3d Graphics Engine」に改良したというが、何をどう“Improved”したのかは不明だった。また、メモリーをEDO DRAMからSDRAMに変更したといったあたりが、主な相違点である。
RAMDACの速度はViRGE/VXよりもやや落ちて170MHzとなったが、当時の製品で220MHzはハイエンド向けのレベルだったから、170MHz程度で十分だったとも言える。これによって、多少なりとも性能の改善が行なわれたのも事実である。ただViRGE/DXになっても、相変らずローエンドの性能レンジでしかないのは事実であった。このViRGE/DXにSGRAMのサポートを追加したのが、「86C385」こと「ViRGE/GX」である。
ViRGE/GXに続いて1998年に登場したのが、AGPへの対応と動作周波数の引き上げを図った「86C357」こと「ViRGE/GX2」である。なぜ型番の数字が減るのかは、当時も今もいまいち理解できない。基本的な構成はViRGE/GXを引き継いでおり、動作周波数が100MHzまで引き上げられて、AGP 1Xに対応した程度のマイナーバージョンアップである。
動作周波数は50%も引き上げられたのだが、ViRGE/GX2が登場する前年の1997年は、Voodoo GraphicsやNVIDIAの「RIVA 128」、ATIの3D Rageシリーズなど、より高速な競合製品が多数投入された年でもある。ViRGE/GX2の程度の性能改善では、むしろ相対的に「性能レンジが下がった」と評価される事態になった。そうでなくてもローエンド扱いだったViRGEシリーズだが、このあたりで完全にウルトラローエンド向けとして確定してしまった感じだ。

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