3月14日から16日まで、東京ビッグサイトで開催されたモバイルIT市場に関する展示会「モバイルITアジア」。その最終日である16日には、アスキー総合研究所 所長の遠藤諭による講演が開かれた。「クルマ離れ、テレビ離れ、ゲーム離れはどこに流れているか?」と題して行なわれた講演では、アスキー総研による調査を元に、「○○離れ」の実態や、「ソーシャルネイティブ」世代のSNS利用動向などについてが報告された。
テレビだけでなくパソコン離れも進んでいる!?
講演の初めに遠藤所長は、「世代間やメディアのギャップが広がっている。2010年から2011年にかけては、メディア環境が戦後で一番変化した時期かもしれない」と述べ、経済力からメディアへの接触の仕方まで、ギャップが広がっていると指摘した。
○○離れの例として遠藤所長は、「活字離れ」の書籍や「CD離れ」のCD販売や音楽ダウンロードについて、数字を上げてその実情を説明した。まず書籍については、1995年から2007年までで1億5000万冊もの売り上げ減があった一方で、同時期に公共図書館での貸出冊数は2億2300万冊も伸びているというデータを提示。「離れているのは本ではなく『新刊書籍』である」との分析を披露。音楽についても、右肩下がりの音楽CD売り上げだけでなく、有料音楽配信も2008年を境に減少しているという。
遠藤所長は“大学に入学した頃にmixiにも加入した世代”を「ソーシャルネイティブ」と位置付け、そうした世代が今や社会人として入ってきているという環境の変化を提示。「メディアの椅子取りゲーム」が今起きている状況であり、マスマーケティングは効かなくなり、対象となる層へのフォーカスにテクニックが必要となっているという、マーケティングの難しい時代になったとの見方を示した。
また、よく言われるテレビ離れに留まらず、携帯電話の利用者数やパソコンのネット使用時間も低下し、スマートフォンへと移行しているという現状を、数字を上げて説明。FacebookやTwitterなどのSNSがどの年代に好まれているかの調査も披露した。20代女性ではTwitterを好む傾向が突出して高い一方で、Facebookは比較的幅広い年齢層の男性に評価が高いという。
震災後はライフスタイルに大きな変化
火を点けないと落ちた消費意欲は戻らない
講演の最後に遠藤所長は、東日本大震災後のライフスタイルの変化についての調査結果も提示した。ニュースへの関心が高まり、政治や社会制度に対する信頼感が低下という社会的変化のほかに、貯蓄や保険への関心が高まり、消費意欲は落ち込んでいるという。消費の落ち込みについて遠藤所長は、時間が経てば戻るという状況にはなく、「もう一度火を点けないと戻らない」「ショックが必要」という見解を披露。消費を戻すための明確な対策がなければ、今後も消費意欲は減退したまま続くと警鐘を鳴らした。