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データセンターにあわせたカスタマイズが大きな鍵

電力や環境、資産管理まで!ラリタンのDCIMはここが違う

2012年03月13日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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ラリタンといえばKVMスイッチの大手だが、近年は電源管理やDCIM(Data Center Infrastructure Management)の分野まで手を拡げつつある。ラリタン APAC&ジャパン シニアプロダクトマーケティング マネジャーのフランク・ホァン氏に同社の戦略について聞いた。

ITとファシリティがクロスし始めている

 KVMスイッチ専業ベンダーであったラリタンが、電力管理の分野に進出したのは今から5年前の2007年にさかのぼる。「2007~2008年くらいにITとファシリティの世界がクロスし始めた。設備側の人は電力を減らす必要が生じ、IT側の人はより多くの電力をラックに供給したいと考えた。こうして、お互いが電力管理について考えるようになった」(ホァン氏)という。

ラリタン APAC&ジャパン シニアプロダクトマーケティング マネジャーのフランク・ホァン氏

 その頃には、データセンターの省エネ化を目指すGreen Gridも結成され、PUE(Power Usage Effectiveness)がデータセンターの評価基準として台頭してきた。まさにグリーンITの真っ盛りである。こうした背景があり、ネットワーク経由で電源のオンオフや電力の監視などを行なえるいわゆるインテリジェントPDU製品を投入したという。

 そして、この電源管理をとっかかりに「KVMスイッチの展開を通して、長らくデータセンター管理の効率化を目指してきた」(ホァン氏)という同社が、幅広くデータセンターの情報を一元的に管理するDCIMの分野に乗り出した。現在、ラリタンではAsset(資産)、Capacity(性能・能力)、Change(変更)、Power(電力)、Environment(環境)、Energy(エネルギー)の6分野をDCIMの対象分野と捉えている。

DCIMで核となる6分野

 ホァン氏は、これらの分野で、どのような情報を収集し、どのように活かすか、きちんと考慮して管理を検討すべきだと主張する。「たとえば管理対象はサーバー1台単位か、ラック単位か。1時間単位か、1分単位か。そしてどこまで深く解析するかで、ソリューションがは大きく異なってくる」と説明する。その他、相互接続性やセキュリティ、拡張性、収集範囲なども重要なポイントだという。

 また国や地域によってデータセンターの管理ニーズも異なってくる。ホァン氏は、「シンガポールは温度や湿度が高いのでエアコンが必要だが、アラスカや北海道は外気冷却が利用できる。米国のデータセンターはスケールが巨大なので、発電所の近くに建設したがる。アジアがデータセンター全体を俯瞰して見る傾向があるが、米国はデバイス単位でのパターンなどを細かく見たがるユーザーが多い」と指摘する。

インプットデバイスと管理ツールで包括的なDCIMを

 こうしたニーズに対し、ラリタンは包括的なDCIMソリューションを提供する。まず情報のインプットデバイスとして、タグやセンサー、インテリジェントPDUなどがある。そして、これらのデバイスから収集したデータを元にデータセンターの管理を可能にするツールも提供している。前述したDCIMの分野のうち、資産、キャパシティ、変更管理を「dcTrack(日本未発売)」、そして電力、環境、エネルギーを「Power IQ」という管理ツールが担当する。「センサーで収集した生の情報を、Power IQでユーザーにとって意味のある情報に換えることができる。理想の値との開きを埋めたり、PUEのチェックやグリーン化の取り組みをチェックすることが可能だ」(ホァン氏)。HPやIBM、BMC、マイクロソフトなど幅広いサードパーティとの連携が可能なのも大きな特徴となっている。

IT管理とデータセンター管理まで含めたラリタンのソリューション

 そして3月7日に発表したITアセット管理ツール「AMT/AMS」と環境管理のスマートラックコントローラ「EMX」も、こうした戦略の延長上にある。

 AMT/AMSはAsset Management Tag/Sencerの略で、文字通りデータセンター向けの資産管理タグとセンサーを指す。AMTは磁力でIT機器に取り付ける64ビットの電子IDタグで、これをラック内に設置したAMSで読み取り、SNMP経由でdcTrackなどのコンソールに通知するという仕掛けだ。これで1U単位でIT機器インベントリやロケーションを正確に特定できるという。「RFIDという選択肢もあるが、これはあくまで倉庫で最適なものだ。鉄のラックに囲まれたデータセンターでは必ずしもよい選択とはいえない」(ホァン氏)とのこと。

AMT/AMSによるインテリジェントなIT資産管理

 一方、スマートラックコントローラと呼ばれるEMXは、温度や空調、気圧などのセンサーを統合し、Power IQやdcTrackなどに送信する役割を持つ。こちらは電力や環境、エネルギーなどの管理に役立てられるほか、ドアの開閉といったセキュリティ面でのチェックにも利用できるという。

 ラリタンの強みは、こうした製品ポートフォリオに加え、さまざまなデータセンターでの実績。要件にあわせたベストプラクティスを持っているので、ユーザーのニーズにあわせたコンサルティングが可能だという。ホァン氏は「たとえば電力に関して見れば、多くのユーザーは、われわれにどれくらいの電力消費の削減が可能か聞くが、われわれは逆にどれくらいの電力が必要かをユーザーに尋ねる。ビジネスを考えれば、最適化が必要で、必ず削減のみを目的にすべきではない」ということで、データセンターやユーザーのビジネス環境に応じた提案を行なえるのが強みだと語る。

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