50倍もの高倍率はちょっと驚異的なレベル!
まずは各社の高倍率ズームの実力を確かめてみた。望遠は光学ズームの限界ではなく、画素切り出しズームの最大値としている。
広角側が35mmとすると50倍では単純計算で1750mmもの望遠になる(35mm換算)。デジタル一眼カメラ用の400mmや500mmといった望遠レンズには大砲のような大きさのものもあることを考えると、とんでもない性能をコンパクトなサイズで実現しているということがよくわかる。
実際に撮影してみると、50倍超という高倍率の威力にはかなりびっくりした。撮影場所から被写体(高層タワー)まではおよそ1.2kmほどの距離だったが、その中にいる人影まではっきりと写っていたのだ。
下にそのサンプル画像を掲載しているが、すべて左が最広角、右が最望遠(特殊ズームオン)で撮影したもの。左の画像の中央にある、タワー頂上付近をズームしたのが右の画像である。
これだけのズーム性能があれば、学校行事のイベントはもちろん、野球場やサッカー場での試合といった状況でも画面いっぱいに子供の姿を捉えることができるだろう。ただし手ブレ補正がどれだけ進化しても、これだけの倍率になると風が吹いただけでビリビリと画面が揺れてしまうので、三脚は必須だ。
まずはキヤノンのHF R31から見てみよう。広角側はややソフトな印象になり、周辺部の色収差はわずかだが、樽形の歪みも生じている。忠実感のある色合いでリアルな描写ではあるのだが、ちょっと見通しのよさでは不足を感じてしまう。
望遠側になると、パっと見るとシャープな印象だが、細かいラインのにじみや白い壁面のザラつきが目に付きやすい。反面、暗部のノイズはよく抑えられているし、室内の人影もしっかり出ている。
ソニーのCX270Vは、望遠側の周辺でわずかな色収差があるものの、歪み感は少なく見通しのいい映像だ。ただし、上級機と比べるとディテール感がやや甘い印象になる。このあたりはズーム倍率なども含めて仕方がないだろう。望遠側では若干のデジタル処理による映像にじにみや暗部のノイズの増加が気になった。
パナソニックのV300Mも、解像感の甘さや望遠でのノイズが多少出ているが、もっとも目立ちにくく見やすい映像になっていた。
特筆したいのは展望室内もかなり明るく再現できていることで、50倍ズームということを考えればかなりの実力の高さと言っていい。
ただし、望遠側はデジタル処理のせいか広角側にくらべて全体にソフトな印象になる。(ノイズの少ない)見やすさを考えると仕方のない部分だろう。広角側はメリハリの効いたくっきり画質で、高精細というほどではないが見通しのいい映像だ。
光学10倍ということで、ここではやや場違いではあるが、一応JVCケンウッドのGZ-VX770も試してみた。広角側は中央部はなかなかの解像感で、さすがは価格的には1クラス上のモデルと思ったが、周辺の色収差や樽形の歪みはほかのモデルよりやや多いのが残念。スリムサイズ化の影響がどうしても出てしまうのだろう。
望遠側はほかのモデルよりも小さく写っているので精細に感じるが、ディテールは甘くなっておりノイズの影響も目に付きやすい。とはいえ、実用を考えれば十分なレベルだ。
これらを見てみると、画質的な意味ではパナソニックが解像感とノイズの少なさのバランスがよかった。とはいえ、およそ1.2km先の映像をここまで鮮明に撮影できるというのはかなり驚異的。
あまり数字ばかりにこだわらず、実用上不満のない30倍くらいの倍率にとどめ、光学ズームも倍率を落とす方向を考えても良いとさえ思った。
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