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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第141回

AMDが2013年に投入するPiledriverコアの新技術とは?

2012年03月05日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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Piledriverに導入される
「共振クロックメッシュ」とは?

サーバー向けCPUロードマップの、説明が若干異なるバージョン

 ロードマップの大枠の説明をしたところで、サーバー向けCPUとPiledriverコアについて、もう少し説明しよう。まずサーバー向けCPUから。上の画像は1ページめに掲載したサーバー向けCPUロードマップとほぼ同じスライドだが、右側の説明が異なっている。3ヵ月前の連載129回でのロードマップは下の図のとおりだったが、この時点では「Interlagos」の後継は「Terramar」、「Valencia」の後継は「Sepang」になっていた。

2011年12月時点でのサーバーCPUロードマップ。余談だが、1プロセッサーサーバーが引き続きSocket AM3+を使う以上、やはり2013年のVisheraもSocket AM3+のままなのは間違いなさそう

 このTerramarが「Abu Dhabi」となり、Sepangが「Seoul」でそれぞれ置き換えられた。大きな違いは、以前の予定だとBulldozerの後継製品は10コア/5モジュールの製品の可能性が示唆されていたのが、今回はっきりと「ハイエンドでも8コア/4モジュールだ」と明示されたことである。やはり現在の32nm SOIプロセスでは、ダイサイズを大きくするのは困難だったようだ。

 ロードマップ自身も若干の修正がある。Interlagos世代は12/16コア製品のみと129回でのロードマップには記載したが、実際には4/8コア製品も投入された。G34の場合、2つのダイをMCM(Multi Chip Module)で接続するのが原則である。つまり、2コア/1モジュールおよび4コア/2モジュールのBulldozerのダイを、MCMで接続したラインナップもあるということになり、これがPiledriverベースのAbu Dhabi世代でも継承されるようだ。

 以前からPiledriverの世代では、IPCおよび動作周波数を向上させるという話があった。このうちIPCに関しては依然としてその詳細が不明であるが、動作周波数向上につながる工夫としてISSCCで発表されたのが、Cyclos Semiconductorの「共振クロックメッシュ」の技術を、Piledriverに実装したという話である。これをもう少し詳しく説明しよう。

CPUコアの進化の系譜。この図そのものは、AMDが以前から公開しているものと同じ

 まず大前提であるが、CPUを初めとするほとんどのデジタル半導体は、同期回路と呼ばれるもので構成される。「何が」同期しているのかと言うと、内部の細かな回路ブロックが、全部同じタイミングで動作するという意味である。図1はn個の回路ブロックが直列でつながっているケースである。

図1 同期回路の概念図

 この場合、すべての回路ブロックにクロック信号が供給され、このクロック信号の立ち上がり(倍速だと立ち上がりと立ち下がり)のタイミングで信号の取り込み、および信号の出力を行なう。クロック信号という“掛け声”にあわせてバケツリレーをすることで、効率よく処理を実行させようという仕組みだ。

 理論上はこれでいいのだが、実際に実装する場合、クロックの“ずれ”が問題になる。ようするに「配線による遅延」だ。図1で言えば、クロック信号源に一番近い「ブロック#1」と一番遠い「ブロック#n」では、だいぶ距離がある。このまま放置すると、クロック信号の位相のずれが発生する。もちろんある程度はマージンはあるが、1~2MHzで動いている回路ならともかく、4GHzともなるとクロックの周期が250ps(0.25ns)だから、マージンといってもせいぜい10ps程度であろう。伝達遅延をなんとしてもこの範囲内に収めないといけない。

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