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バックアップを変える重複除外ストレージ「Data Domain」 第3回

現場の管理者が抱えるバックアップの悩みとは?

磁気テープを使う管理者Sの嘆きとData Domainへの期待

2012年03月15日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 記事協力●EMCジャパン

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「手動での交換や運用は面倒だが、磁気テープは捨てられない」という、あるシステム管理者Sが、重複除外ストレージ「Data Domain」の導入を検討しているという。ここでは、バックアップの課題と導入を検討するData Domainへの期待を見ていこう。

磁気テープの呪縛からなぜ逃れられないのか?

 管理者Sが所属するのは、ITリテラシの高くない中小企業でも、予算のまったくとれない小規模事業者でもない。最新のIT機器やソリューションを扱う都内のシステムインテグレーターである。しかも、スマートフォンや仮想化、ビジネスアプリケーションなどのIT武装は万全なのに、基幹システムのバックアップだけは磁気テープのままだという。

磁気テープを捨てられないと話す管理者S(イメージ)

 管理者Sは、「2年前に基幹システムをリプレースし、SQL ServerのDBをエージェントでバックアップしています。全部で12ファイル、合計で約200GBの容量を毎朝4時に出力し、圧縮をかけます。それをバックアップサーバーにコピーし、磁気テープに吸い上げています」と、現在のバックアップ体制についてこう説明した。Symantec Backup Execで平日は差分バックアップ、日曜日にフルバックアップ、という一般的なローテーションを行なっている。

 さらに、バックアップを収めたテープメディアは取り出して、午後に来る配送業者に手渡しし、大阪支社に搬送する。サブの基幹システムが構築されている大阪支社と東京本社で相互にテープを保持することにより、「東京本社が災害や停電の場合は、大阪に送っておいた磁気テープからデータを復旧させます」(管理者S)とのことで、災害対策になっているわけだ。加えて、大阪支社とWAN経由でのレプリケーションも行なっており、前日までのデータは確実に戻せるように二重に保険をかけている。

管理者Sの会社のバックアップ構成

磁気テープのバックアップはこんなに面倒

 一見するとなんの弱点もない磁気テープのバックアップだが、管理者Sにとってみればここまでやるのは負担も大きいという。まずは毎日テープを交換しなければならない点。配送業者が来て、初めてテープを用意するというあわてた対応もあったとのこと。

 また、リストアに時間がかかるのも難点。同社では7本1セットでローテーションをしているが、いざというときに適切なテープを選び出して、ロードした磁気ドライブからデータを読み出し、圧縮されたデータを展開するだけでかなり時間がかかる。「そこから手順を確認しながらリストアしていくと、半日くらいはかかってしまいます」(管理者S)。手順に関しても、異なる拠点で戻す場合は、オペレーションミスが起こらないよう相手に理解できるような手順書を作らなければならない。これが意外と難しいという。

管理者Sのバックアップに関する悩み

 時間がかかっても、きちんとリストアできれば問題ない。しかし、「過去にテープで読み取りエラーが出たことがあり、本当に焦りました。結局、クリーニングしたことで、ちゃんと読み込めましたが、自分のバックアップが間違っていたかと思うと、精神的に大きな負担でした」(管理者S)ということもある。リストア先のサーバーで展開する空き容量が足りないという事態に陥るのも怖いという。確実にリストアできなければ、管理者にとってバックアップの価値はゼロに等しいのだ。

 聞けばわかるとおり、「手動での交換や運搬が負荷」「オペレーションミスが心配」「テープがきちんと読めないことがあった」など、まさに課題山積みだ。しかし、ここまで負担が大きくても、磁気テープはなかなか捨てられない。「ディスクストレージでレプリケーションしても、双方のドライブが故障したら、結局ダメ。でも、別途保管されているテープだったら大丈夫だよね、という話は情報システム部でたまに出ます。そういう意味で、テープは最後にかけた保険という意味合いが強いのです」(管理者S)と説明する。

テープを捨てるための課題をData Domainは解決できるか?

 日々のバックアップ運用にさまざまな課題を抱える管理者Sは、最近EMCのData Domainの導入を検討しているという。前回までの2回の連載で見たとおり、Data DomainはD2Dバックアップ専用のストレージであり、磁気テープを置き換えるだけで、高速で効率的なバックアップが可能になる。重複したデータブロックを書き込まないようにする重複除外により、データ容量自体を削減できる。バックアップに関して課題を抱えているユーザーにとっては最適なストレージといえる。今まで価格的に敷居が高かったが、Data Domainの価格自体がかなり下がったので、管理者Sにとっても気になる存在になりつつあると話す。

 管理者Sは、Data Domainのどの部分に期待しているのだろうか? Data Domainでは、磁気テープに比べたコストパフォーマンスや高い信頼性なども謳っているが、同氏は「きちんとバックアップでき、リストアが短時間で終わること。そして、自分以外の担当者でも利用できること」というシンプルな要件を出した。テープでやっていた当たり前のことが、当たり前にできるという点がとても重要なわけだ。

 管理者Sは、「テープは必要といいながら、どこかで要らないという気持ちもあります。たとえば、情報システム部でもたまにディスク故障が怖いという話題になりますが、テープだから壊れない、ディスクだから壊れるということにはならないと思います。Data Domainが目の前できちんと動いているのを見たら、テープを捨ててしまうかもしれません」と話す。

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 今回は現場の声に耳を傾けたが、次回はData Domainを実際使ってみた結果を披露しよう。管理者Sの期待に応えられるか、10日間のバックアップオペレーションを試してみたので、重複除外の効果や運用メリットなどをレポートする。

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