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山あり谷あり!NTTPCの「WebARENA」が歩んできた15年 第3回

仮想化・クラウドを受けとめるWebARENA

専用サーバーより速いVPSを!SuitePRO誕生の舞台裏

2012年03月21日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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NTTPCの「WebARENA」15年の歴史を追う本企画の第3回目は、VPSサービス「WebARENA SuitePRO」誕生と成長を前回と同じWebARENAのメンバーに聞いた。あわせて、クラウドを見据えた今後のWebARENAの方向性についても議論を深めてみた。

作れたから始めた? VPS登場の舞台裏

話を聞いたNTTPC データセンター事業部のメンバー(後列:サービス開発部 ハウジング担当 担当課長 井崎 義浩氏(左)、技術開発部 サーバプラットフォーム担当 主査 萩原正浩氏(中央)、担当部長 伊藤琢巳氏(右) 前列:技術開発部 設備担当 担当課長 薗 正幸氏(左)、データセンタサービス担当 担当課長 祷 陽一郎氏(中央)、サービス開発部 ホスティングサービス担当 伊藤綾子氏(右)

 WebARENA SuitePROはWebARENAブランドの代名詞ともいえるVPS(Virtual Private Server)サービスだ。物理サーバーを複数ユーザーで共有しながら、仮想サーバー単位ではきちんとroot権限を持てるというVPSは実に画期的。価格面、機能面でも専用サーバーと共用サーバーの間を埋める存在であり、リソースも効率的に利用できることから、サービスプロバイダーにとっても注目度は高かった。

 今となってはVPSといえばある程度認知度も高くなったが、2003年当時は仮想サーバー自体がユーザーにとって未知の存在であった。こうした中、なぜVPSを始めたか聞くと、WebARENAのメンバーから「作れちゃったから(笑)」という答えが返ってきた。「当時、米国のVerioでは先んじてFreeBSD jailを使って、OSレベルの仮想化にチャレンジしていました。そこで、私たちもLinux-VServerというオープンソースを使い、仮想化を試してみました。意外とちゃんとできたので、サービス化しようと商用化に向け検証を進めました」(データセンタ事業部 担当部長 伊藤琢巳氏)というのが背景だ。「業界に先んじて『月額4桁の料金でなんとか出していこう』という目論見があった」(伊藤氏)とのこと。VPSサービス自体も国内ではクララオンラインやラピッドサイト(現GMO)など一部しかなかったのだ。

 こうして2005年5月に登場したのが、Linux-VServerをベースにしたWebARENA SuitePROである。国内のVPSとしては初めてLinux(Fedora Core 3)をベースにしており、価格も月額8820円(税込・クレジットカード払い)と見事4桁台を実現した。低廉な価格でありながら、物理サーバーと同じ使い勝手を実現したVPSは、専用サーバーと共用サーバーに続く第3の選択肢と認知されるようになった。「Webブラウザ経由で仮想サーバーの再起動ができるとか、当時はなかったので、ユーザーさんから驚かれました。オンラインで購入して、即時利用できるというサービスも当時はほとんどなかったですね」(データセンタ事業部 サービス開発部 ホスティングサービス担当 伊藤綾子氏)。もとより、NTTPCはオンラインでの課金システムをISPサービス用に提供していたため、仕組みの実装も早かったという。

2000年当時のアスキーの雑誌を見ても、ホスティングサービスの老舗としてNTTPCが名を連ねていた

 仮想サーバーとはいえ、OSのroot権限をユーザーに渡すというサービスは過去に提供した経験はなかった。そのため、「SSHも塞がなかったし、Fedora Coreも初期状態で提供していたので、あっという間にクラックされてしまいました。当初、プロ向けの仕様として提供したので、こうした設定はユーザーが自身でなんとかしてくれると考えていたが、実際はUNIXにあまり慣れてなかった人も多かったようです」(データセンタ事業部 技術開発部 サーバプラットフォーム担当 主査 萩原正浩氏)といったこともあった。仮想OSをどのレベルまで提供し、コントロールパネルで操作できるようにするかは、試行錯誤の連続だったという。

品質と性能を中心に据えたWebARENA VPSの進化

 いの一番にVPSを開始したNTTPCだったが、WebARENAのメンバーは必ずしもサービス内容に満足していたわけではなかった。「初期のVPS(SuitePro)はLinux-VServer をベースにしていたのですが、安定性や性能という面で納得のいくものではありませんでした」(萩原氏)、「価格競争が激しくなったこともあるので、私たちは品質と性能を中心に据えようと思いました。専用サーバーより速いVPSを作ろうというのがコンセプトでした」(伊藤琢巳氏)というのが、WebARENAのメンバーの意見だった。

伊藤琢巳氏は「専用サーバーより速いVPSがコンセプトだった」と語る

 こうして生まれたのが、2007年のSuitePRO V2である。Linux-VServer からの変更先となるOS仮想化技術としては、VPSでの採用が多いVirtuozzoではなく、オープンソースのOpenVZを採用した。これはリソース配分の柔軟性や管理のしやすさなどを考慮した結果で、Virtuozzoであれば標準搭載されていたコントロールパネルは、NTTPCがイチから自作したという。また、SANベースの共用ストレージを採用。これは、今でいうところのクラウドに近いオンデマンドな拡張性を確保することと、RAIDのみならずバックアップ対応まで行なおうという目的だった。ディスク容量も6GBから20GB~に拡張し、データの大容量化に備えた。

 その後、2010年にリリースされた現行のSuitePRO V3では、ディスク容量やメモリの増加といった基本スペックの強化や稼働率100%という高いSLAを謳う安定運用が大きな目玉となった。「とにかく耐障害性を高めるため、フェイルオーバーやネットワークの冗長化、バックアップシステムの強化などを進めました」(伊藤綾子氏)とのことで、インフラ面を充実させた。

 また、2010年というクラウドの潮流を捉え、オンデマンドでメモリやディスクを増量できるようにした。「ただ、リソースを動的に増減させるまではやりませんでした。リソース管理の仕組み自体はあったんですけど、増減したリソース料金は日割りで課金できればよいかなと考えていました」(伊藤琢巳氏)とのことで、従量課金やオートスケールなどはサービスに盛り込まなかったという。その他、メールのウイルススキャン-GW商用のアンチスパムエンジンである「Symantec Brightmail AntiSpam」の採用や、10日間の試用が可能なデモIDの追加、オプションのWeb改ざん検知サービスやバックアップの世代管理など、かゆいところに手の届くサービス拡充が細かく行なわれている。

共有リソースでありながら高い自由度を謳うWebARENA SuitePRO V3のサイト

仮想化やクラウドの波をきちんと受け止めていく

 このように15年を振り返ると、WebARENAは低価格化の流れ、競合事業者、新技術という3つの戦いの歴史だったことがわかる。最新技術を取り入れるだけに安住せず、絶え間なくサービスの低価格化を推進していかなければ、競合の事業者との激しい戦いに勝てない。特に、新興事業者の多いホスティング業界において、競合は次々と新しいサービスと価格で勝負を挑んでくる。「NTT」のブランドが必ずしも通用しないこのシビアな市場で、WebARENAは果敢に勝負し勝ち残ってきた。

運用面での苦労やユーザー動向の変化などにも話が及ぶ

 加えて、運用のフェーズにおいては、外部からのセキュリティ侵害やシステムの不具合、トラブルなどにも早急に対応していく必要があった。この過程で、サービスの不具合が発生したことも事実だが、そこでの反省やトラブル対応は確実にメンバーが糧にしてきたようだ。

 こうして15周年を迎えたWebARENAだが、次はどうなっていくのか? まず現状の使い方について伊藤琢巳氏は、「2010年くらいから使い方が明らかに変化してきています。リソース拡張するユーザーが思いの外多くなっています」と分析。VPSのようなリソース拡張に対応したサービスが、今後どんどん市民権を得てくると予想する。こうした状況において今後、伊藤琢巳氏が注目しているのが、ネットワークのマネジメントだ。「サーバーやストレージの仮想化は済んだし、ハイパーバイザーの完成度も高くなっているので、次はネットワーク。物理的なつなぎ替えなしに、ソフトウェア制御でネットワーク構成や設定が変更できれば、よりフレキシブルなサービスが提供できます」と述べる。

 また、データセンタ事業部サービス開発部 ハウジング担当 担当課長 井崎義浩氏は、「われわれはWebARENAのインフラがあり、それをVPNでつなぐという形でサービスを提供しています。今後は、自社でそのインフラを消費し、ある程度アプリケーションに軸足を移していく方向性もあるかもしれません。必ずしもクラウドに載せられないシステムもありますので、これらを安心して提供できる基盤を提供していきたいです」というヒントをくれた。BCPの観点から拡がりそうな社内ITのアウトソーシング化の流れにも、今後きちんと乗っていきたいと話す。井崎氏は「今まで苦手としてきたパートナーリングなどの施策も、きちんと進めていかないと行けませんね」と自戒する。

 伊藤琢巳氏は「日本は米国に比べても2桁くらいホスティングの市場規模が小さいんです。よく『ブルーオーシャン』という表現が使われますが、きちんと価値を訴求していけば、もっと流行ると思いますよ」と、WebARENAが立ち向かっている市場に対して明るい展望を持っている。15周年を迎えたWebARENAの今後の動向が注目される。

NTTPC「サーバーお乗り換えキャンペーン」を展開中!

 WebARENA15周年を記念し、NTTPCではWebARENAのVPS SuitePRO V3や共用サーバーSuiteXの初期費用や月額利用料が無料になる「サーバーお乗り換えキャンペーン」を以下の要項でスタートさせた。

対象商品

VPS:WebARENA SuitePRO V3タイプ

共用サーバー:WebARENA SuiteX

※オプションの利用料金はキャンペーンの適用外になります。

期間

2012年2月14日(火)~2012年5月14日(月)

※オンラインでのお申し込みは2012年5月14日(月)17:00まで 書面によるお申し込みは2012年5月14日(月)の消印有効

対象ユーザー

キャンペーン期間中に、対象商品を新たにお申し込みで、契約時のアンケートにお答えのお客さま。

※ 契約時のアンケートにお答えのない場合、キャンペーン対象外となり通常料金でのご利用となります。

キャンペーン特典

VPS:WebARENA SuitePRO V3タイプ
初期料金無料
共用サーバー:WebARENA SuiteX
初期料金+月の利用料が最大3ヵ月分無料 ※
※ 年一括払いでお申し込みの場合は、年額利用料の3ヵ月相当が無料となります。 ※ 1ヵ月目は加入日より日割り計算となります。

キャンペーン適用条件等

・キャンペーン適用期間終了後は通常料金となります。
・オプションの利用料金はキャンペーンの適用外になります。
・お申込み内容に誤りがあった場合には、キャンペーン特典が適用されない場合があります。
・本キャンペーン内容は予告なく変更及び終了する場合がございます。
・最低利用期間は1年となります。途中で解約された場合、残存期間分の料金は請求対象となります。

 締め切りは2012年5月14日(月)までとなっているので、共用ホスティングやVPSを検討しているユーザーはぜひ検討してもらいたい。


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