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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第140回

GPU黒歴史 不出来なドライバーで波に乗れず Ticket to Ride 4

2012年02月27日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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 話を戻すと、こうしたハイエンドなグラフィックスコントローラーを搭載したことで、Number NineのPepperシリーズはハイエンドグラフィックスカードの市場をがっちり掴んだ。さらに、TMS34010の後継で動作周波数向上と機能改善を果たした「TMS34020」を搭載した製品を、「GXi」シリーズとして投入する。

 PepperにしてもGXiにしても、狙う市場は業務向けの、高いグラフィック性能を求められる領域だ。ここに1000~3000ドルという、今の水準で見てもかなり高価な製品群を用意した。こうした市場の場合、利用されるPCも互換機よりはIBM純正のワークステーションの方が多いということもあり、対応したのはISAおよびMCAのみ。当時互換機メーカーのワークステーションで採用されたEISAとか、PC向けに普及を始めたVL Bus(関連記事)には対応しなかった。

初の128bitグラフィックチップ
Imagine 128を投入。しかし後継品は……

 1993年に「PCI Specification 2.0」がリリースされ、VL BusやEISA、MCAといったプラットフォームが、PCIへと移行してゆくのに対応して、Number NineもPCI対応グラフィックチップが必要になった。これに向けて自社開発したのが、「Imagine 128」というグラフィックチップである。「128」とはフレームバッファとグラフィックチップが128bitバスで接続されていることを意味しており、一般的には世界最初の128bitグラフィックチップとして、Imagine 128は記憶されている。

 1994年に発売されたImagine 128だが、いきなりの自社開発とあってか、いろいろ無理やりといった感じのするグラフィックチップだった。Imagine 128はWindowsをメインターゲットにした製品で、WindowsのGDIに特化したアクセラレーション機能を搭載したが、一方でVGA機能の実装が間に合わなかった。そのためグラフィックチップ内にPCI-ISAブリッジを搭載して、その先にISAバス経由でシーラス・ロジックの「GD5422」が接続されると言う、変則的な構成だった。

 そのため、DOS環境での性能は高いとは言えないが(低いと言うべきか)、DOSゲームなどを考慮する必要のない同社の製品では、それは問題にはならなかった。逆にGDIの描画性能や、RAMDACの性能には異様なこだわりがあり、4MBメモリーの下位モデルですらTIのRAMDAC「TVP3025」、上位モデルにはIBMのRAMDAC「RGB526」が搭載されていた。この頃は、メインストリーム向けだとBrooktree社の「BT485」(135MHz)が一般的で、やや高級向けがTVP3025の175MHz品を使用するという程度。Imagine 128は、そのさらに1グレード上のRAMDACで構成されていたわけだ。

 1996年には、後継製品である「Imagine 128 II」を搭載した「Imagine 128 Series 2」がリリースされる。もっとも、グラフィックチップそのものはImagine 128から大きく変わらず、主な違いとしては若干の3D機能の追加と256bit幅のビデオレンダリングエンジン、それとディスプレー出力のダブル・バッファが追加された程度である。

 しかし、市場では同じくハイエンドを志向したMatroxの「Millenium」と思いっきり競合した関係で、低価格化を図るべくいろいろな工夫を施している。例えば初代のImagine 128は、基板上にImagine 128とそのフレームバッファ(4、8MB)、RAMDAC、それに加えてVGA用のGD5422+GD5422用フレームバッファがところ狭しと置かれており、かなり大きなサイズのカードになっていた。これがImagine 128 Series 2では、(若干グレードアップした)GD5424とGD5424用フレームバッファを基板裏面に配置することで、カードのサイズを若干ながら縮小するのに成功している。

 性能改善の方策としては、例えばハイエンド版にはVRAMとしてIBMの製造する「H-VRAM」(デュアルポートのEDO DRAM)を使うほか、3D関連機能を追加したりもした。ところがこの3D機能に問題があった。グローシェーディングとミップマップ機能の追加はまぁいいとして、32bitのZバッファがまったく使えない代物だった。というのも、DirectXは当時32bitのZバッファをサポートしておらず、機能を有効にしてもZバッファとして使われるのは半分の16bit分でしかなかった。そのくせフレームバッファをZバッファ用に喰われてしまうので、テクスチャーやフォントキャッシュの領域が足りなくなるというものだった。

 結局Imagine 128 Series 2も、「高速な2Dカード」としか扱われなかった。一応Number Nine側の言い分を記すと、当時同社が想定したのは3D CADなどの領域であり、こうした用途では16bitのZバッファでは精度が足りない恐れがあったからだ。また、こうしたCADではグローシェーディングがあれば、表現的に十分という判断もあった。

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