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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情第139回

GPU黒歴史 スマッシュヒットの初代が足枷に RenditionのGPU

2012年02月20日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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後継のV2x00は性能面でパッとせず失敗作に

 これに引き続きRenditionは、1998年に「Vérité V2100」と「Vérité V2200」をリリースする。両者の違いは動作周波数だけで、V2100が40MHz、V2200は50MHzで動作した。プロセスは0.35μmに微細化され、パイプライン構成は相変らず1本のままであるが、レンダリング性能は200万トライアングル/秒、5500万ピクセル/秒と大幅に向上している。ただしレンダリング性能が上がっても、肝心のゲームパフォーマンスはV1000と大きく変わらない、というのがV2x00の問題であった。

 これにはいくつか理由がある。まずV1000/V2x00の描画パイプラインそのものは、性能は高いものの機能はそれほど多くなく、さまざまな拡張機能はもっぱらRISC CPU側が担っていた。そのため、V1000からV2x00への変更で描画パイプラインそのものは強化されたのに、RISC CPUの処理性能はそれほど上がっておらず、ここでパフォーマンスのミスマッチが発生した。ようするにRISC CPU側に足を引っ張られて、描画パイプラインが十分に動かなかった。

 RenditionがグラフィックスにRISC CPUを組み合わせたのは、「さまざまなAPIに柔軟に対応できるように」という思惑があってのことだったが、実際には相変らずOpenGLへの対応状況はひどいままであった。そのうえ1997年に登場したDirectX 5への対応もかんばしくなく、「動くものの性能は並」程度であった。結果として、V1000の時と同じく独自APIを使ったDOSアプリケーションに関しては高速に動いたが、最新のAPIを使う環境ではV1000の時ほどの優位性はなくなっていた。ついでに言えば、V1000対応のDOSアプリケーションのいくつかは、V2x00ではそのままでは動作しなかった。そのためV2x00をV1000に見せかける、「V2DOSFIX」なるパッチまで登場した。

 もうひとつ問題だったのは、V2x00の構造的な問題である。V1000では遅いCPUをカバーするために、描画コマンドをメモリーからDMA転送をかけて取り込み、RISC CPU側で処理をオフロードするという仕組みになっていた。この仕組みはV2x00にも踏襲されたのだが、この頃になるとRISC CPUよりもCPUの処理性能の方が高くなっており、オフロードの意味がない、というよりもむしろボトルネックになっていた。

 この結果、採用事例は大手ベンダーではDiamond Multimedia社が「Stealth II S220」としてV2100を採用したほか、Hercules社が「Thriller 3D」としてV2200を採用した程度。あとは中小ベンダーに若干の採用例がある程度である。しかもV1000の時には「高性能な3Dカード」という扱いだったのが、Stealth II S220は「3D機能が搭載された最廉価カード」(末期には50ドル程度で販売された)に位置付けられるなど、控えめに見ても成功したとは言いがたかった。

富士通やHerculesと組んで性能向上を目指すが……

 だが今回の本題はここからである。そんなわけでVérité V2x00は黒歴史とは言わないまでも失敗作扱いだったが、その間にもマーケットはどんどん進んでいく。1998年の「DirectX 6」に続き、1999年には「DirectX 7」がリリースされることは当然Renditionもよく理解していた。DirectX 7では重要な仕様である「Hardware T&L」がサポートされるため、当然これの対応を考えた。V2x00に内蔵されるRISC CPUでHardware T&Lを実装するのは到底不可能だが、だからといって急にHardware T&L機能を新規に作るのも無理だった。

 そこでRenditionは、富士通およびHerculesと組んで、Vérité V2x00にHardware T&Lを搭載するという共同開発を始めた。というよりも、どうもこの共同開発はHerculesが仕掛けたものらしい。これに関して詳細な文献はすでにないのだが、どうも富士通が持っていたHardware T&LエンジンとVérité V2x00を、1枚のボード上に実装する仕組みだったようだ。

 もっとも、富士通のHardware T&LエンジンはDirectX 7用に開発されたものではなく、汎用の3D頂点計算用だったようだ。これがうまくいくようだったら、統合してワンチップ化するとか、仕様をDirectX 7向けにするといった対応を考えていたようだ。しかし、描画パイプラインが1本しかないVérité V2x00では、仮にHardware T&Lに対応したところで描画性能はたかが知れている……。ということで、この開発プロジェクトはすぐに中断された。

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