Smasung側からの訴訟に当局が注目
果たしてこの訴訟合戦はどういう形でケリがつく?
ここまでは2社間の訴訟だが、注目されるのが欧州委員会(EC)が着手したSamsungに対する調査だ。場合によってはスマートフォンベンダー間の特許訴訟合戦に影響を与えるものとなりそうに見える。
ECは1月31日、SamsungがEUの競争法に反して必須技術に関する自社特許権を濫用している疑いがあるとして、正式な調査を開始することを発表した。必須技術とはある製品に不可欠な技術のことで、携帯電話なら無線通信が好例だ。欧州では3G仕様策定にあたり、必須技術特許を持つ企業に対し、標準化団体ETSIが公正な方法でライセンスするよう求めており、Samsungも1998年に合意していたという。
なお、このような必須技術特許は公正(Fair)、合理的(Reasonable)、非差別的(Non-Discriminatory)な条件でのライセンスを義務付けていることから、FRAND(アメリカではRAND)特許といわれる。
Samsungが特許訴訟で主張している3G無線はこのFRAND特許に該当するものが多いため、当局の目に留まった。「Samsungは2011年、加盟国の裁判所において、競合するモバイル端末メーカーを相手取って特許侵害を主張したが、この特許は欧州モバイル通信標準にとって必須といわれているものだ」とECは述べている。そして、FRAND条項に反していないかを調べ、独占的地位の濫用に該当するかどうかを調べるとしている。この調査にさかのぼってECは2011年秋にAppleとSamsungに対し、FRAND特許に関する調査を行っていた。
なお、すっかりモバイル特許訴訟の専門家になってしまったFlorian Muller氏(もともとはフリーソフトウェアとソフトウェア特許問題で活動していた人だ)は、現時点ではSamsungだけだが、欧州でFRAND特許を主張することは難しくなるだろうとし、Motorola MobilityなどもFRAND特許の濫用に該当する可能性があると示唆している。
終わりそうにないスマホの特許訴訟、市場が決めてくれるのか、法廷が決めてくれるのか、当局がストップをかけるのか、それともベンダーの財務・体力勝負なのだろうか。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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