スマートフォンベンダー間の特許係争が相変わらず活発だ。ほとんどでAndroidが絡んでおり、中でも最大のAndroid端末メーカーであるSamsungが関係したものが目を引く。激しいシェア争いを繰り広げるAppleが目の敵にしているほか、破産申請したKodakもSamsungを相手取り訴訟を起こした。今回はここ1ヵ月のスマホ特許訴訟について、Samsung対Appleを中心にまとめる。
2011年春に本格開戦した
AppleとSamsungの特許紛争
AppleとSamsung――これまではお互いにメリットがある取引関係を持っていたはずの両社の関係が変わったのは、2011年4月にAppleがSamsungをアメリカで提訴したときだ(携帯電話分野だけで見れば、iPhoneでAppleが参入し、世界シェア2位のSamsungのライバルとなった2007年とすべきかもしれないが)。
Appleはチップを調達する相手であるSamsungに対し、GALAXYシリーズで展開するスマートフォンやタブレットが自社製品を模倣していると主張した。Samsungはこれに訴訟で報復、すぐにAppleを提訴した。訴訟はその後、アメリカから欧州、日本、豪州など地理的に拡大し、訴訟件数はゆうに20を超えている。
Appleが主としてデザインに関する特許を主張しているのに対し、Samsungは主に無線通信技術に関連した特許を主張する、というのが大きな図だ。Appleが優勢に動いているようにみえるが、Samsungが初期判定を覆す事例も出てきている。
Samsungからの3Gに関連する訴訟は黒星続きだが
Appleのデザインに関する主張も必ずしも認められていない
そこで2012年に入ってから出た判決を見てみよう(いずれも本判決ではなく暫定判決)。
AppleがSamsungを提訴していたものでは、オランダとドイツで判決が出ている。タブレットが争点となっているオランダでは1月24日に控訴裁判所が「GALAXY Tab 10.1」はAppleのデザイン特許を侵害していないという結論を出した。この訴訟はAppleが、2011年8月の第一審での判決を不服として起こしたものだ。一審でAppleはスマートフォンでの販売指し止めを勝ち取ったものの、タブレットでの主張は認められなかった。控訴裁の判断はこれを支持するものとなる。なおSamsungは販売差し止めとなったスマートフォンについて、すぐに該当部分を修正したものを製造することで対応している。
ドイツではデュッセルドルフの控訴裁が1月31日に判決を出した。やはりAppleがデザイン関連での特許を主張していたもので、SamsungのGALAXY Tab 10.1はAppleの特許侵害にあたるとする第一審の判決を不服としてSamsungが控訴したが、結果として第一審を支持する形となった。SamsungはGALAXY Tab 10.1の販売差し止め令を回避すべく、すでにドイツ市場向けに「GALAXY Tab 10.1N」を提供しており、Appleはこれに対しても「GALAXY NEXUS」と合わせて特許を主張していた。だが、タッチ画面でのスクロール表示などの技術特許を主張するAppleに対し、ミュンヘン地裁は2月2日にこれを退ける判決を下した。
Appleはこれらと並行して、欧州で新たな攻撃も仕掛けている。1月半ばにAppleはデュッセルドルフで2件の訴訟を起こし、約10機種のSamsungのスマートフォン、5機種のタブレットが自社特許を侵害していると訴えた。2件とも主としてデザインが関連したものとなっているようだ。
逆にSamsungがAppleを提訴したものも判決が出ている。まず1月はじめ、イタリアで3G無線通信技術に関する特許侵害を理由に「iPhone 4S」の販売差し止めを求めていた件で、訴えを却下する判決が下った。SamsungはiPhone 4SをAppleが発表した翌日にイタリアやフランスなどで訴えたが、フランスではすでに2011年12月に訴えを退ける判決が出ていた。今回のイタリアもこれにならう形となった。
ドイツのマンハイム裁判所でも1月20日と27日に見解が下った。ここでSamsungは3G無線通信技術に関する特許のほかエモティコンといわれる顔文字の特許も不正利用されたと主張したが、結局訴えは2回とも退けられた。
この1ヵ月あまりを見るなら、Samsungが開始したものについては全部黒星となった。だが、Apple側も同社が主張するデザイン関連の特許に裁判所はそれほど特異性や優位性を認めていないように見える。
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