2011年3月11日に発生した東日本大震災から早くも11ヵ月。震災当日の首都圏は人的被害こそ大きくなかったものの、交通機関の麻痺により、大量の帰宅困難者が発生した。記者も当日の夕刻、西新宿界隈の甲州街道が帰宅のために西へ向けて歩く人で埋め尽くされているのを目撃し、これがもし首都圏直撃の震災だったら、どれほどの混乱になるのだろうと暗澹たる思いを覚えたものだ。
実際に大量の帰宅困難者が発生したことは、防災対策に関わる東京都庁を始めとした諸機関に多くの教訓をもたらし、実情を踏まえた帰宅困難者対策が大きな課題となっている。去る2月3日、東京都は埼玉県・千代田区・新宿区・豊島区、および関係する諸機関と合同で、大規模な帰宅困難者対策訓練を実施した。東京、新宿、池袋といった主要ターミナル駅や周辺の集客施設からの、利用者の保護や誘導、徒歩帰宅への支援が行なわれた。
訓練はターミナル駅だけでなく、臨海部でも実施された。東京都江東区若洲では、都と在日米陸海軍の合同による、帰宅困難者の洋上輸送訓練が行なわれた。今回は在日米陸軍による洋上輸送訓練に同行する機会を得たので、フォトレポートを中心にその様子をお届けしたい。
在日米軍からは駆逐艦と上陸用舟艇が参加
当日の訓練では、米海軍のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「ラッセン」Lassen DDG-82と、米陸軍のLCU 2000級上陸用舟艇「フォート・マクヘンリー」Fort McHenery LCU 2020が参加。東京都江東区若洲の東京木材埠頭から、帰宅困難者に扮した都職員および報道関係者を乗せて、ラッセンは横須賀、フォート・マクヘンリーは横浜までの洋上輸送訓練を実施した。
訓練開始に先立つ共同記者会見では、ラッセン艦長のウォルター・ライ中佐と、フォート・マクヘンリーが所属する在日米陸軍第836輸送大隊司令官のグレゴリー・N・バン中佐、東京都総務局総合防災部長の村松明典氏らによる共同記者会見が開かれ、共同でこうした訓練を行なう重要性を語った。バン中佐は、港湾施設がなくとも物資の陸揚げや救難活動が可能なLCU(Landing Craft Utility)の能力が、人道支援活動に有用であることを説明し、訓練を重ねることで能力を発揮させることが可能になると述べた。
東京木材埠頭から洋上輸送訓練に参加したのは、在日米軍の2隻であったが、そのほかにも海上自衛隊や保安庁からも艦艇が訓練に参加していたとのことで、かなり大規模な訓練が広範に実施されたことになる。都職員や関係機関が訓練を積み重ねることにより、実際の震災時に発生した帰宅困難者の誘導や支援がよりスムーズに行なわれるとなれば、こうした共同訓練の重要さがわかるだろう。
それでは次ページより、訓練に参加した2隻と、訓練の様子についてレポートしていきたい。