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仕事と生き方を変える、著名人の意見 第17回

あたかも老舗の飲食店

「歴史活用」の方法論 ~古いものを、もう一度現代に

2012年02月06日 13時00分更新

文● 子安大輔

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最近、「天丼」を食べましたか?

 さて、この店を2つのビジネス的な視点で見てみましょう。1つはマーケットの競争環境です。皆さんは最近、「天丼」を食べましたか?「言われてみれば、しばらく口にしていないな」という人は、私をはじめ意外と多いような気がします。それももっともなことで、そもそも天丼を食べることのできる店には限りがあります。一番ポピュラーなのはチェーン店の「てんや」でしょう。てんやでは一番オーソドックスな天丼が500円とワインコインで食べることができます。もっとも高いメニューでも700円台ですから、気軽に天丼を食べるにはもってこいです。

 同店を経営するテンコーポレーション(現在はロイヤルホールディングスの子会社)ですが、直営店舗は116店あります(同社のウェブサイト上の直近の表記である2010年5月時点)。かたや、同じ「丼業界」である牛丼を見てみると、首位のすき家が1727店、吉野家が1189店、松屋が860店(すべて2011年11月時点)ですから、規模がまったく異なることがわかります。ちなみに、てんやを追随するようなチェーンは存在しないことからも、天丼自体にビジネスとしてのポテンシャルを感じている人や企業が少ないことが見て取れます。

 てんや以外に天丼を食べることのできる場がもう1つありますが、それは言うまでもなく「天ぷら屋」です。夜は天ぷらのコースや盛り合わせを食べさせる店が、ランチタイムに限っては天丼を出しているというケースはよく見かけます。この場合は、最低でも1,000円以上、少し名の知れた店であれば1,800円や2,000円ということもざらにあります。

 さて、ここまでから言えることが2つあります。1つは、天丼には他のジャンルほどのマーケットサイズはないかもしれないが、競争が極めて少ない静かな市場であるということ。そしてもう1つは、サプライヤーはワインコインのてんやと、1,000円以上の天ぷら屋にわかれていて、特にランチ時の主戦場であるその中間帯においてはプレーヤーがほぼ存在していないということです。この2点は新たな市場機会を狙っている人や企業にとってはチャンスと言えるでしょう。

 さらに天丼というアイテムは、食べる機会は少ないものの、積極的に嫌いと言う人も少ないはずです。こうした状況を考えると、チェーン展開のビッグビジネスを目論むには難しいでしょうが、単店として勝負を挑むには、天丼とは非常に面白い市場であるということがわかります。

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