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Apple in Education : Hello Again! 第1回

米国にiBooks 2が必要だった理由

2012年01月27日 13時00分更新

文● 前田 稔

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日本の児童・生徒全員に
iPadが行き渡る日は来るか?

 アップルの囲い込み戦略により、さまざまな教育コンテンツが密接に連携することが期待できる半面、公的資金の投入には障害となる可能性がある。Android陣営や、Windows側からの対抗策が提示されて競争条件が整うまでは、私立はともかく公立学校への導入は難しいだろう。

 保護者側の問題も無視できない。筆者がアスキー総研とともに実施した「子ども電子書籍調査」では、iPadを自由自在に使いこなす児童が多かった一方で、子どもの視力への影響を心配する声が聞かれた。特に小学生に対する社会的なコンセンサスを得るには、まだ時間がかかるだろう。

 以上を踏まえて考えると、日本においては、まずは指導者用の電子教科書の基盤としてiBooks 2を使っていくことが、普及の第一歩となろう。そのためには、電子黒板にiPhoneやiPadの画面を映し出して、電子黒板の画面上でマルチタッチ操作できる技術の開発が重要になる。パソコンなしで操作できるのであれば、パソコンアレルギーの教員も電子黒板/教科書を抵抗なく使いこなせるはずだ。

 アップルが発表したツール群は、世界中の教育制度を研究し尽くして周到に準備されたものであることをうかがわせる。営利的な利用と非営利的な利用を厳密に区別し、出版社と教員を同時にアップルの世界に引き入れる戦略が垣間見える。

筆者紹介――前田 稔(まえだ・みのる)

 東京学芸大学専任講師。専門は教育クラウド、学校図書館学、思想・表現の自由、病院における読書環境など。教育クラウド協会会長のほか、新潟大学、放送大学、武蔵野大学等で非常勤講師を務める


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