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Apple in Education : Hello Again! 第2回

電子教科書、iPadでいいのでしょうか?

2012年01月28日 12時00分更新

文● 藤原和博

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デジタルツールを用いるのに
適した学習内容とは?

 さて、どんな学習内容がこうしたデジタルツールを使うのに合っているでしょうか? 私は、子供たちの「情報編集力」を養成するために、デジタルツールは画期的な授業手法の転換を迫るものだと考えています。つまり、私が提唱しているネットワーク型授業の「[よのなか]科」のように、「情報が逆流する」ということ。子供たちが考え、発信した意見を、先生側が受け止めて、授業に生かせるようにするのです。

 大事なことなので繰り返します。マシンがコンピューター室に閉じ込められていた時代から1人1台のモバイル端末時代に変わったなら、学習のかたちも「調べ学習の充実」ではなく、「ひとりひとりが自分の意見を発信する」ことが重要。つまり情報の編集とプレゼンが重視されるものになる必要があるのです。次に、電子デバイスの導入の効果が高いと思われる分野を挙げましょう。

 (1) 反復を伴う学習
 (2) 英語の自動学習教材
 (3) 社会科や理科の授業立体化

 (1)の反復学習とは、算数の練習、漢字や英単語の記憶、社会科の暗記科目など。これについては、すでにニンテンドーDSを使ったフィールドワークで実証済みです。早く全国的に定着させて、先生方のこの分野での負担を軽減するべきでしょう。

 (2)の英語の自動学習教材とは、電子黒板と端末の組み合わせで、ほぼ自習でまかなえる「ロボット先生」です。自動学習で学べる部分を増やせば教員の負担を減らす効果もありますし、英語が話せない、発音が悪いといった先生のサポートにもなります。

 (3)の社会科や理科の授業の立体化とは、授業スタイルを一新し、子どもたちの学習に対する動機づけを飛躍的に向上させる手法です。私が「電子模造紙」と呼ぶ大型ディスプレーが必要なことにも触れておきましょう。

 先生たちが模造紙のようにクルクルっと巻いて持ち運べる、黒板の半分~3分の1の大きさのディスプレーで、黒板に張り付けられるものです。投影用のスクリーンではなく、それ自体が発光するもの。日本の教室の大きさはもはや、いまどきの中学生の体格を反映していません。だから、40人もの生徒たちが机を並べると、プロジェクターを置くスペースもないのです。このディスプレーには、昼時にカーテンを閉めなくても画像が見える輝度が欲しいし、教師が持つスマートフォンと接続して使えるようにしたい。そうすれば、学校外のゲストをスマートフォンで呼び出して、授業に迎えるのも容易になりますよね。実際の行き来が不要になるぶん、相手にとっても都合がいい。この「電子模造紙」は、教室を開かれたものにしてくれるのです。

筆者紹介――藤原和博(ふじはら・かずひろ)

 東京学芸大学客員教授/NPO子供地球基金顧問/杉並区立和田中学校・前校長。'03年より5年間、都内では義務教育初の民間出身校長として杉並区立和田中学校校長を務めた。http://www.yononaka.net/


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