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仕事と生き方を変える、著名人の意見 第16回

オリンパス事件、日本と海外で反応に大きな差

今年の日本のコーポレート・ガバナンスの課題

2012年01月30日 09時00分更新

文● 橘・フクシマ・咲江

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「制度」「運用」「人財」――どの要件に焦点を当てるか

 2点目の前提の差は、「制度」「運用」「人財」というガバナンスの要件のどこに焦点を当てるかで議論が分かれているところです。

 特に欧米では「良いガバナンスは制度によって達成できる」という考え方が強く、制度の形をガバナンスの評価基準とする傾向があります。特に「経営者が投資家の不利益になる行動をしないように監視する」役割の「“独立取締役”がいない取締役会などは考えられない」という理解です。

 日本の場合は、今回のオリンパスのケースでも、経団連の立場は「日本のガバナンス制度には問題はない。アメリカの「社外取締役が多数」という制度を取っていたエンロンでも問題は起こった。したがって、「オリンパスのケースは例外的であり、制度の問題ではない。」という立場でした。つまり、「誠実さ(integrity)」に頼るガバナンスということができます。これは、以前アジアのリーダーの特徴として、「人間関係で仕事をする傾向がある」というKFI&EIUの調査とも一致する点です。

透明性の高い「制度」を持つ必要性

 3点目はその背景として、「制度」の必要性に関して歴史的経緯に差がありました。 多様な背景や価値観を持つ欧米の社会では「法律」や「制度」によって共通のルールを決める必要があります。日本の場合には、今までは共通の理解を持つ人々が多かったために、「制度」や「法律」で縛る必要がなかったという歴史的な背景があります。しかし、これからは、多様な価値観に対応するために、誰が見ても分かる透明性の高い「制度」を持つ必要があることは共通認識になりつつあります。

 今後はグローバル化を目指す日本企業には「独立取締役」導入は不可欠です。 特に、日本も高度成長によって社会が豊かになり、バブルを経験したことで、その倫理観のみに頼る「人財中心」のガバナンスにも限界が出てきています。制度面での充実も不可欠です。現状では、海外の投資家から「株主軽視」との批判を受けても、仕方のない状況にあります。その点でも、「社外取締役」だけではなく、「独立取締役」の導入を積極的に図らなければなりません。

【筆者プロフィール】 橘・フクシマ・咲江

コーン・フェリー・インターナショナル日本法人代表取締役社長、会長を務め、2010年8月アジア・パシフィック地域最高顧問に就任すると同時にG&S Global Advisors Inc.を設立し、代表取締役社長に就任。コーン・フェリー米国本社の取締役を12年間務め、花王、ソニー等の初の女性独立取締役を歴任。現在はブリヂストン、味の素の独立取締役で、「人財革命」をはじめキャリアに関する著書多数。コーポレート・ガバナンスも含めて広く執筆・講演活動も行っている。

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