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JR東日本ウォータービジネスが考えたミネラルウォーターの差別化

「落ちないキャップ」はビッグデータから生まれた?

2012年01月25日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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1月24日、JR東日本ウォータービジネスはマーケティングデータの解析で生まれた「落ちないキャップ」を採用したミネラルウォーター「FROM AQUA(フロムアクア)」についての発表会を開催した。エキナカ自販機で得られた情報を解析した結果、キャップを落とした経験が多いことから生まれた商品だという。

エキナカの自販機イノベーション

 JR東日本ウォータービジネスは、JR東日本グループ向けの飲料の仕入れ・卸し、エキナカでの自販機事業、そしてオリジナル商品の開発を行なう会社になる。発表会で代表取締役社長の田村修氏は、自販機不況下において売り上げを伸ばしているビジネスの概況を説明した。「注目してほしいのは、台数自体は横ばいなのに、この5年で売り上げを1.5倍に拡大した点」(田村氏)。これは「自販機イノベーション」と呼ばれるいくつかの施策が功を奏しているという。

JR東日本ウォータービジネス代表取締役社長の田村修氏

 1つめは、メーカーにこだわらず売れ筋商品を品揃えする「ブランドミックス」だ。通常の自販機は単一飲料メーカーの商品のみを揃えているが、同社は大手・地方のメーカー約20社と取引。売れ筋商品や商品を揃えつつ、エキナカでさばいている。

自販機イノベーションによる売り上げの増大

Suica対応のメリットはスピード購入

 もう1つはスピード購入を実現する「Suica対応」だ。Suicaは、自販機の持っているスピード購入というメリットをさらに増す効果がある。「Suica対応で、本当に売り上げが伸びるのかよく聞かれる」(田村氏)が、2007年に30%程度だったSuicaの決済率は、なんと47.6%(2011年12月)に達しており、売り上げ増分の半分を占めている。

 そして、2009年12月からはPOSやSuicaのIDの行動履歴、属性データの取得を行なう決済端末「VT-10」を一斉に導入。現在では自販機約4500台に設置され、センターサーバーに情報を定期的にアップしている。前述のとおり、もともとSuicaはスピード購入という利便性にフォーカスされていたが、SuicaのIDやSuicaポイントクラブの会員データとのマッチングを行なうことで、属性分析やリピート分析などマーケティングの活用が実現するようになった。

自販機によるマーケティングを積極的に推進

 田村氏が挙げた実例は、午後の需要を喚起する「おやつ飲料」だ。時間別、性年代別のデータを調べたところ、「夕方以降、果実飲料が男性に売れているのがわかった。小腹満たしのために購入してくれていると仮定した」とのこと。これを女性にも拡大しようと、甘みの高い果汁飲料を提案し、売り上げの増加を実現した。

 その他、購入回数によるセグメント化、競合商品との顧客属性比較、あるいはホーム/改札内/改札外/駅ホーム/幹改札などの場所別の売れ行きなどの分析を実施したという。こうした分析はデータ量の増大と共に時間がかかっていたが、昨年富士通の高速データ処理エンジン「OhPa1/3」を採用することで、大幅に高速化されたとのことだ。こうしたマーケティング施策の成果物、今回リニューアル発売されるのが、同社開発の看板商品であるミネラルウォーター「フロムアクア」である。

徹底したデータ解析と調査により商品コンセプトを明確化

 フロムアクアは、谷川連峰の湧水を旧国鉄時代に商品化した「大清水源水」と原型とし、2007年にリブランディング。その後、エキナカのミネラルウォーターとしてのブランドを確立したものの、競合製品に比べて個性が弱いという弱点があった。これをてこ入れするために、POSデータによる購買者属性や購買リピート、購買行動などを分析したという。

フロムアクアでは確固たるブランドが必要という結果に

 たとえば、JR東日本ウォータービジネスの社内には、フロムアクアは電車に乗る前に買っているか、降りた後に買うのかという議論がつねにあったが、POSデータ等で居住エリア、購買エリア、時間帯売り上げによるクロス集計を実施した結果、フロムアクアは乗車前に購入するという仮説が生まれた。さらにミネラルウォーターの購買者を対象にインターネットで調査したところ、乗る前に購入し、移動中に飲むという購入行動が裏付けれたのことだ。ここから生まれたのが、「持ち歩きたくなる水」というフロムアクアの新しい商品コンセプトだ。

 こうした移動飲用における課題として浮き上がったのが、キャップとデザインという2つだという。同社が行なった消費者調査では、移動中においてはペットボトルのキャップを落とした経験を持つユーザーが多く、さらに学校や会社で飲む場合に比べてデザインへの意識が大幅に高いことがわかった。ここから「落ちないキャップ」と女性を意識した「おしゃれなデザイン」が新しい商品の特徴となった。

落ちないキャップの使い方と特徴

デザインも女性を意識したパッケージに一新

 国内ペットボトル・ミネラルウォーターで初採用となる落ちないキャップは、キャップ下部(リング)とキャップがバンドでつながれており、開けた後もボトルから離れない。実際、配られたサンプルで使ってみると、通常のキャップを回す感覚で開けられるが、リングとの接合部を軸に回転させると、キャップがカチッがはまり、キャップを落とさないで、片手をふさがれずに飲める。最低20回の耐久性を確保しており、飲み終わった後はひねれば切り離せる。消費者テストの結果も良好で、「便利だと思った」が76%、そして「フロムアクアを買おうというきっかけになる」も67%に上ったという。

 発売は3月6日で、価格は500mlが110円、280mlが100円と据え置きとなる。発売前には大規模なサンプリングやキャップの動きを見せる広告を展開していく予定。

 いわゆるビッグデータという用語から想定される大規模な非構造化データの解析ではなく、POSやアンケートなどのクロス集計案件となるが、自販機のようなセンサーから収集したデータを解析し、商品化に有用な情報に仕立てたという点ではビッグデータの活用例とも言えそうだ。今後はSNSのような情報の活用も検討していくという。

初出時、社長の田村氏の名前に誤記がありました。お詫びし、訂正させていただきます。本文は訂正済みです。(2012年1月25日)

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