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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第85回

なぜ学研が楽器屋でシンセを売るのか?

2012年01月28日 12時00分更新

文● 四本淑三

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大量生産は付録づくりのノウハウで

―― SX-150markIIは、KORGのmonotronシリーズとそんなに差はないと思っていたんですが、あらためて見ると音も含めて全然違いますね。

古川 方向性がかなり違います。monotronはデジタルに近い音色かもしれませんが、SX-150markIIはより音に丸みがあると言うか、オールドと言えばオールド。本格的なアナログシンセの音を出したいという設計なので。

―― これは岩上(直樹)さんの設計ですよね。

古川 そうですね。基板の設計は彼一人で。それプラス、キーボードやシンセを扱う人の意見を聞いて、何回も何回も試してもらって。このボタンの下の導電ゴムの形状も、先が若干とがるようにして。そうしないと単純にオンオフしか効かないような感じになるんです。

「monotronはデジタルに近い音色かもしれませんが、SX-150markIIは音に丸みがある」

―― 開発の仕方が楽器メーカーと違って面白いと思うんですが、これは言ってみればアウトソーシングですよね?

金子 僕らは出版社ですからあくまで企画を出して。設計は外に出してということです。

―― じゃあ逆にメーカーじゃなくても、こういうものを作れる可能性はありません?

古川 それは大量生産のノウハウがないと難しいでしょうね。

―― あ、やっぱり。

金子 コストを押さえて機能を残す技というのは、科学と学習の付録づくりをずっとやってきているので。その辺は、我々の前の先輩からのノウハウが積み重なってきている、その土台があるからできる感じですね。

古川 個人で5~6個作りましたというのと、量産するのでは随分違う。「大人の科学」の付録の試作をしている人が、工場の生産管理までフォローできるんです。パーツの形状を改良したりという事で、問題を随時解決したりしています。

金子 その方は、元を正せばオモチャの設計をずっとやってきた人で。オモチャの世界は安くしなくちゃ出せないから、そういう細かいアイディアの塊なんですね。

―― 以前、タカラトミーアーツのにんげんがっきの開発の方からもそういうお話を聞きましたね(関連記事)。おもちゃ業界には昔からある人的なネットワークがあるんですか?

金子 そうそう。そのノウハウをおもちゃに応用したり、こういうのに応用したりということです。あの業界も広い世界じゃないんで、誰が何してどう作って、中国のどこの工場でって、お互い分かっちゃう。そういう事ができる人って、そんなに人数いないので。

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