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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第85回

なぜ学研が楽器屋でシンセを売るのか?

2012年01月28日 12時00分更新

文● 四本淑三

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ウダーがなかなか出ないのはなぜか

―― サウンドガジェットシリーズのこれからのラインナップはどんな感じですか?

金子 その話については担当者を呼びましょう。ウダーという楽器はご存知ですか?

―― もちろん。宇田さんには一昨年の夏(2010年7月)に取材させてもらって、そのときには、「早ければ来年(2011年)の春には出る」という話だったんですが、そこからずいぶん経ちましたよね?

金子 うーん……。その通り。あれはね、別にプロモーションの戦略とか、そういう問題じゃなくて開発が簡単にいかないんですよ。

ウダー(2010年版)。ここから徐々にアップデートを繰り返している

―― いくらくらいを想定しているんですか?

金子 できれば1万円を切るくらいの感じで。あれで1万円を切るって大変な話なんだけど。(製造を委託している工場の)中国人にとっても大変で。彼らのコストに対する意識は日本人の比ではないですからね。宇田くんももちろん妥協しないし。

―― 宇田さんも厳しいんですか。

金子 厳しいですよ。彼は軽く言うんですが、それを実現するのにどれだけコストがかかるかという話をして、それでも妥協もできないわけだし。

 (ここでサウンドガジェットシリーズ担当の古川さん登場)

―― いまサウンドガジェットシリーズの今後のラインナップを伺っていたところです。

古川 確実に決まっているのがウダーくらいしかないんですけど。

金子 「確実」って言葉の使い方が正しいかどうか、いま微妙だよねえ。

古川英二氏。サウンドガジェットシリーズを担当している

―― はははは。どこが難しいんですか?

古川 オリジナルのウダーは、両側に演奏のとき指で押さえる黒いチューブが巻いてありますけど、あそこに片方で190、両方で380くらいの感圧センサーが付いているんです。それで半音より細かい微妙な音程も出せるというのがウダーの特色なんですけど、それを忠実にやろうとすると、1万円台では出せない。でもそこがウダーらしさなので。

―― オリジナルのウダーのあの部分は導電ゴムで自作しているそうですけど。

古川 押すことによって通電量を変化させて反応させるというものなんですけど、それを作ろうとすると予算的に普通の楽器の値段では出せないですね。

金子 導電ゴム、高いからね。

古川 導電ゴムは「SX-150 mark II」にも使っているんですよ。この部分にちょびっとですけど。(といって指さす)

VCFのボタンに導電ゴムを使い、力加減でフィルタリングを調整している

―― おおっ、VCFのボタン、押す力加減によってフィルターの開き加減が変わるんですね。知らなかった。

古川 そうです。キーボード付きのシンセなんかだと、左側にベンドホイールが付いていますけど、同じ事をしても面白く無いので。音のデリケートな変化を出そうということで、導電ゴムの形状も開発して部品も一から作ったんです。

金子 ね、こうやってちょびっと使うものなんだから、導電ゴム。

―― ウダーはこの導電ゴムが全周に巻かれているわけですよね。

古川 そうなんですよ……。だから、開発中のウダーには導電ゴムを使っていないんです。

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