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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第85回

なぜ学研が楽器屋でシンセを売るのか?

2012年01月28日 12時00分更新

文● 四本淑三

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実は本来の出発点に戻っただけ(ただし表向きの理由)

―― 学研が急にシンセ作り始めた、しかも楽器屋に並んでる、どうなっとるねん? というので今日は来ました。

金子 まずそこでしょうね。僕らは「科学」と「学習」の編集を長いことやっていたんですが、「大人の科学」も当初は今のようなマガジンスタイルじゃなく製品版だった。もともと単体のモノに特化してやっていたんです。製品版を1~2年やってきたところで、大人の科学マガジンが出来たという経緯なんで、モノ単体でやるところからスタートしているんですね。

学研 大人の科学編集長 金子 茂氏

―― 最初の復刻版電子ブロックがそうですよね?※1

金子 そうですね、あの一連の製品版シリーズです。マガジンになったのは、あの復刻版を出して1年後くらいかな。それがマガジン版の創刊号ということで※2

※1 復刻版電子ブロック : 2002年に発売された「学研電子ブロックEX-150復刻版」は、1976年に発売された学研電子ブロックの復刻版だった

※2 マガジン版の創刊号大人の科学マガジンとしての創刊号は2003年4月発売の「ポンポン船」。

―― じゃあ本来の出発点に戻ったということですか?

金子 うん、まあどこまで話していいか分からないけど、それが表向きの理由です。

―― ということは裏向きの理由もあるんですか?

金子 本屋さんで売るためには本が付いてないとダメなんですよ。それでマガジンでやってきたということです。もう1つは、書店で5000円だの1万円というモノを買ってくれる可能性は低い。でも僕らは付録の開発を続けてきて、あとこれだけお金がかけられたら、もっと良くなるのに、ということをけっこう経験してきた。大人の科学マガジンの場合なら今回の「電子ブロックmini」が3990円で、それ以上の定価では本屋さんに流せない。そういう問題がずーっとあって。今回は楽器店への流通が実現し、それで出せるようになったんです。

楽器の性質によって書店/楽器店の流通メリットを使い分けている

―― SX-150 markIIを楽器店に流してみて反応はどうですか?

金子 楽器としては安いですから、数は出ていると思います。

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―― マガジンの方は「電子ブロックmini」は初版10万部、大人の科学マガジンの「テルミンmini」は20万部も出たという話ですけど。

金子 安いものをたくさん売るということに関して、書店ルートは強いですね。テルミンminiに関して言えば、大人の科学マガジンの付録候補としてはずっとあったんです。マガジンのアンケートをとったら、テルミンをちょっとやってみたいという人が多いと分かってきた。だからそんなに大コケはしないだろうということで。そうしたら非常に評判が良くて、増刷に増刷を重ねたということです。

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―― 付録や別冊の企画はどうやって「コレで行こう!」と絞り込むんですか?

金子 きちっとしたマーケティングに基づいています。と言えたらカッコイイんだけど、全然それだけじゃない。

―― ええ、とてもそうは思えないです。

金子 たとえばテルミンは僕も欲しかったんです。調査云々の部分は後からのこじつけと言うか、数字的なバックボーンがないと(社内の)他の人を説得できないから。テルミンは僕も欲しかったんです。僕ら的にやりたいモノ、お客さんに受けそうなモノから順番に試行錯誤しながら「そろそろテルミン?」って感じ。企画会議は僕も含めて全部で5人で、「何やりたい?」みたいなところからスタートして、自分が欲しいものを持ち寄るんですね。そうは言っても、周りで「ん?」となれば企画は通らないですから。喧々諤々やって生き残ったものが出てくるという感じです。

企画はマーケティングより「自分が欲しいか」重視

―― テルミンmini以降は楽器モノが増えてきましたよね。

金子 テルミンをやったら、電子楽器つながりでYMOの松武(秀樹)さんと知り合ったんですよ。それで松武さんの方からアナログシンセサイザーを提案してもらい、彼の知り合いの人を紹介してもらって。科学ファンやメカ好きより、音楽ファンの方が全然広いんですよね。

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