Google TV以外では、サムスンは独自の「Smart TV Platform」を発表したほか、LGもGoogle TVに加えて「NetCast」というプラットフォームも展開するなど、プラットフォームもまちまちといった状況だ。プラットフォームが細分化されている状況だと、アプリケーション開発者は参入しにくいだろう。テレビがスマートフォンやタブレットほど買い換えスパンが短い機器ではないという点も、進化の速いウェブサービスやアプリケーションの機能を取りこみにくい点でもある。
また、スマートテレビの多くは、Netflixやhulu、YouTubeといったオンラインビデオ配信サービスをテレビから利用する機能を持つが、これらは大手テレビメーカーの新製品では、当たり前の機能になりつつある。そのため、ビデオ配信サービスをテレビで利用できるというだけでは、すでに差別化はしにくいという事情もあるだろう。
アプリケーション以外にスマートテレビで模索されているのは、ユーザーインターフェースの改善だ。例えばサムスンはスマートテレビの発表の中で、音声認識やカメラによるジェスチャー操作といった新しい操作への対応を打ち出して、一歩先んじて見せた。マイクロソフトがXbox 360用周辺機器「Kinect」で提示した、カメラを使った顔や動き認識技術をテレビに取り入れるというのは、テレビのユーセージモデルからすれば大いにありえる方向性だろう。
アプリケーションプラットフォームとしてのスマートテレビを模索する動きに対して、東芝は「映像コンテンツを楽しむテレビ」の方向性を重視しているようだ。CES開幕前の記事にもあるように、東芝はタブレットやスマートフォンとテレビやSTBを連携させて、軽快な動作と高度な検索機能を持ったテレビリモコンとして活用するというアプリケーション「メディアガイドApp」と「リモートApp」を発表した。
映像コンテンツに関する豊富なデータベースを有するRovi社の技術を活用して、メディアガイドAppは地上波やCATVで放送されている膨大なチャンネルの番組表を、驚くほど軽快に表示できる。テレビの電子番組表といえば動作がもっさりしたものが今でも多いが、メディアガイドAppの動作は非常に高速で、大量のチャンネルも軽快に閲覧できる。また、赤外線コマンドを発振するIRブラスターと組み合わせることで、新しい東芝製テレビと既存のSTBを組み合わせて利用できるという利点も持つ。
いずれにしても、CESで話題のテーマではあったものの、主役を務めたというほど、スマートテレビが盛り上がっていたわけではない。スマートテレビが前評判ほどの注目を集めたように見えないのは、スマートテレビを買うことでどのような新しいユーザー体験が得られるのかを、メーカー側が提示できていないからではないだろうか。テレビでアプリケーションが利用できることで、どんな新しい体験が得られるのかを示せず、単に「スマホみたいなことができるテレビ」という段階から脱却していないように見える。
あるいは、昨年から再三話題になっている、アップルの次世代「Apple TV」が登場すれば、新しいユーザー体験をもたらすスマートテレビの姿が見えてくるかもしれない。それまではテレビメーカー各社の暗中模索は続きそうだ。
模索の続くスマートテレビ以上に来場者の注目を集めたのは、4Kや有機EL、そしてソニーの新技術を採用したテレビなど、テレビの王道である画質を追求した製品だった。次ページではそれを紹介しよう。
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