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RightScaleと提携するIDCフロンティアが主催

RightScaleとCloud.comのVIPが語る贅沢な講演会の中身

2012年01月18日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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1月17日、米ライトスケールのCEO マイケル・クランデル氏と米シトリックス・システムズのCloud Platform GroupのCTOを務めるシェン・リャン氏の2人がIDCフロンティア主催のイベントで講演を行なった。クラウドの第一人者である両氏の講演は、ビジネス概要やユーザー事例、クラウド普及の課題や見通しなど多岐に及んだ。

一般企業でも使われるようになったRightScale

 講演において米ライトスケールのCEO兼ファウンダーでもあるマイケル・クランデル氏は、まず会社概要と「RightScale」クラウド管理プラットフォームについて説明した。

米ライトスケールのCEO マイケル・クランデル氏

 米ライトスケールはSaaS型のクラウド管理プラットフォームを提供するベンダーとして2006年に設立。「クラウドが革命を起こすのは予感していたが、管理レイヤーが欠けていると感じていた」(クランデル氏)という背景から、モニタリングやアラート、負荷にあわせてリソースを増減させるオートスケールなどを行なう管理エンジンを提供し、管理の自動化・省力化を推進してきた。また、OSやミドルウェア、アプリケーションの構成を定義することでプロビジョニングを省力化する「ServerTemplate」をいち早く実装。RightScaleの代名詞ともいえるこのServerTemplateにより、「ベストプラクティスのサーバー運用をすぐに行なえる」(クランデル氏)を実現したという。昨今はアクセス管理や監査、ロギングなどガバナンス管理も強化されており、最新版ではコスト管理まで行なえると説明した。直近のRightScaleのユーザーは4万5000で、グローバルでは約300万台のサーバーを管理しているという。

RightScaleを現すいくつかもの数字

RightScaleがIDCフロンティアをサポート

 パブリッククラウドに関してはAmazon EC2やRackspace(北米)、KT(韓国)、タタ(インド)など全世界で7つをサポートし、日本ではYahoo!ジャパングループのIDCフロンティアとの提携で事業を展開していく。IDCフロンティアをパートナーとして選んだことについてクランデル氏は、サービス品質がすばらしいこと、3地域のデータセンターが相互接続され、高い可用性で運用されていること、そしてクラウドの先端にいる顧客やパートナーが多いことの3つを挙げた。また、CloudStackやEucalyptus、OpenStackなどのプライベートクラウド基盤もサポートし、パブリッククラウドとあわせ一元的に管理することも可能となっている。当初はAmazon EC2の管理ツールとしてスタートしたRightScaleだが、「すでに全体の84%のユーザーが複数のクラウドと組み合わせて使っている」(クランデル氏)という。

すでに84%のユーザーがマルチクラウド環境で使っているという

 今回の講演で特に興味深かったのは、RightScaleのユーザー事例だ。たとえば、代表的なソーシャルゲーム会社のZyngaは、従来100%Amazon EC2だったインフラを、CloudStackベースのプライベートクラウドとRightScaleに置き換えた。これにより、コスト削減や高い拡張性、信頼性を得られたという。また、玩具メーカーのAmerican Girlは、オンプレミスで行き詰まっていたSNSやショップサイトの構築をRightScaleで行なうことで、ホリデーシーズンのバーストトラフィックを乗り切った。その他、エンコード処理をクラウドで行なわせるSling Mediaや、中国市場向けのサイトを日本のAmazon EC2で構築したIHG、創薬のためのインフラを自動販売機(IT Vending Machine)のように迅速に提供できるようにした製薬会社のLillyなど、さまざまな業界での事例が紹介された。

 IDCフロンティアとRightScaleの連携は2012年2月から開始の予定。RightScale経由で、IDCフロンティアのリソースを扱え、他のクラウドやプライベートクラウドと連携できるという。

仮想化とクラウドの関係を洗い直す

 IDCフロンティアによるRightScaleのデモンストレーションのあとに登壇したシェン・リャン氏は、CloudStackを開発したCloud.comのCEO兼ファウンダー。シトリックスによるCloud.com買収後は、シトリックスのCloud Platform GroupのCTOを務めている。

米シトリックスのCloud Platform GroupのCTOシェン・リャン氏

 リャン氏の講演は、クラウドと仮想化の関係を洗い直すことからスタートした。まず同氏はクラウド台頭の背景に、爆発的なデバイスとデータの増大があると説明。従来のデータセンターではこの動向に対応するため、ひたすらサーバーの仮想化が進められてきたが、単に仮想化するだけでは「複雑」「スケールが難しい」「DRにコストがかかる」といった弱点が解消しないと指摘した。リャン氏は、仮想化によるリソースのプール化や集約化だけではなく、巨大な規模のスケールアウト、セルフサービスや自動化、オープンで付加価値の高い基盤などを特徴としたクラウドのアーキテクチャーが必須になると説明した。

エンタープライズ環境での仮想化の課題

 このクラウドの重要性に最初に気がついたのは、GoogleやAmazon、Zynga、Netflixなどのクラウドプレーヤーだという。彼らはクラウドアーキテクチャーを前提に、アプリケーションを開発するようになった。しかし、自前でソフトウェアを開発できる大手のプロバイダーはよいが、一般企業ではクラウドの恩恵を受けられない。こうした背景があり、一般企業でもクラウドのメリットを得られるよう作られたのが、Cloud.comの汎用クラウド基盤であるCloudStackだったという。リャン氏は、顧客である大手建設会社のベクテルのCIOが「とにかくインフラにお金がかかりすぎる!」という悩みを吐露し、CloudStackを用いて、インフラをGoogle化(Google-ization)した事例を紹介。サービスプロバイダー以外の一般企業でも利用されていることをアピールした。

 講演の後半、リャン氏はシトリックスのCloud Platform GroupのCTOとして、同社がWindows Terminalの時代から「どこでも仕事ができる環境」を一貫して追求してきたことを強調。このビジョンを実現するために、NetScalerやXen、Cloud.com、VMLogix、EMScortexなどを買収で取り揃えてきたと説明した。こうしたシトリックスのメリットとして、ハイパーバイザーも含め、さまざまなOSやミドルウェア、アプリケーションが選択できる点であることを強調。リャン氏は、「もちろん、Xen Serverを使ってほしいが、われわれは中立の立場でハイパーバイザーの種類は問わない。ハイパーバイザーは重要だが、なくてもよい。顧客から見ると、ハイパーバイザーのオーバーヘッドはいまだ大きく、10GbEにもキャッチアップできていない」という持論も述べた。オープンソースを1つの特徴とするCloudStackの生みの親ならではのコメントといえる。

シトリックスの製品体系

 リャン氏は、2012年はどのようなワークロードをクラウドに持って行けるかが大きなチャレンジになるほか、DRについても試行錯誤が必要と述べた。その一方で、クラウドは爆発的に普及していくという見通しを明らかにし、講演を締めた。

 両氏の講演で一貫していたのは、クラウドが大衆化の時代を迎えたという点だ。RightScaleやCloudStackなどのプラットフォームの登場により、クラウドは技術とスケールを持つサービスプロバイダーの商売道具ではなく、ITインフラに悩む一般企業の有力な選択肢として浮かび上がってきたというわけだ。

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