そして、REGZAのアニメモードはさらなる進化を遂げる
氷川 「今日は大変キレイな映像を見せていただいたんですが、ハイビジョンになり、映像の高精細化が進んでいく中で、感じていることに“見えすぎてもいけない”ということがあります。高画質化の宿命という部分もあるのですが、背景の美術がクリアーに見えることで、風景というよりは描き割りっぽく見えてしまったり、昔は見えていなかったセル影のようなものを認識したりと、当時の制作者が意図していなかったところまであけすけになってしまう面があります。
あるとき、背景に折り目が付いていてしわが寄ってることに気付いたことがあって、当時は見えなかったんだろうなと思ったことがあります。すっぴん過ぎて気の毒というか……。それはそれでマニアックな楽しみ方もできるのですが、もし今後アニメモードが進化するなら、“当時見ていたはずのあの色”モードみたいなのがあってもいいのかなぁとも感じました。
一番いいのはセル画時代の色職人とか、背景を描いていた人を取材することなんじゃないかと思います。アニメは、色にしても、撮影の効果にしても、線やテクスチャーなどもすべて、ヒトコマずつ作り込んでいくものですが、それが作り物だとわからないような工夫をしていることがポイントなんです。なるべく自然に、背景は背景ではなくてキャラクターが立っている世界として見せたいと考えているはずです。アニメファンとしては、その演出意図が反映されているものが一番嬉しいですね」
住吉 「アニメモードで、もともと我々が考えていたのは、テレビで放送されているちょっとビットレートの低い作品であるとか、昔のレトロなセルアニメをアプコンしたようなものです。特にデジタル制作の作品では、圧縮系のノイズがあるものをキレイにしたかった。
しかし、例えばヱヴァンゲリヲン新劇場版:破のように圧縮系のノイズがほとんどない高品位なBD作品では、その表現力を上げていくという次の段階のアプローチが必要になってくると思います。逆にいえば現在のアニメモードはそのぐらいのレベルまで来ていると感じています。
そうなると、パッケージメディアの制限=もともと階調性としては各色8ビットしかないとか、4:2:0のクロマフォーマットでは、輝度に対して色の情報は水平半分、垂直半分しかないため1/4しかないとか、映画を含めたコンテンツそのものの条件をクリアしていかないとならない。つまり放送品質をBDに近付けるだけでなく、BDをオリジナルマスターに近付けるようなアプローチが必要になるでしょう。
春以降の新製品では、そのあたりも含めた成果をお見せできると考えています。アニメをさらにキレイにみせるアプローチにも取り組んでいきたいと考えています」
── ここは書いてしまって大丈夫なのですか?(笑)
住吉 「はい(笑)。各社いろいろな考え方があると思いますが、例えば、色関係に関しては比較的やられていないように感じます。色のキレとかそういう部分ですね。あとは、ヒストグラムを見ながら、分析能力を上げていき、ペタッとした平面は少し集中的にモスキートを減らしていくとか──、いろいろチャレンジしていきたいなとは思っております」
── ありがとうございました。
新アニメモードを氷川竜介氏がチェック!(4)
録画版の魔法少女まどか☆マギカ
(録画したデジタル時代の深夜アニメ)
製品版と並べて視聴しましたが、画質以前にBlu-ray用のリテイクカットの多さが目立ちました。構図は同じですが、レイアウト上の室内小道具や場合によっては大道具相当のものの配置を変え、視覚印象を研ぎ澄ませています。そういう意味ではオンエア版はオンエア版で貴重なので、それを高画質で鑑賞できる環境は良いと思いますね。