目指すは「トイニメーション」
続いては、株式会社セガトイズの杉本道俊氏による講演「トイ主導型グローバルキャラクター事業」。米国ではポケモン以来の人気とも言われる『爆丸 バトルブローラーズ』の展開をビジネス面から紐解くものだ。
杉本氏が爆丸で目指したのは「トイニメーション」、つまりトイ(玩具)とアニメーションを同時に開発することを重視したという。爆丸では、作品の企画当初から、磁石のギミックで変形する玩具およびカードゲームとの親和性を高め、そのコンセプトを伝える内容であることが作品づくりの中心にあったという。
もう1つのポイントは「グローバルモデル」。日本も世界市場の1つという位置づけにし、あくまでも世界市場をメインに据えた展開を心がけたという。具体的には、日本は企画、開発や生産はアジア、販売は欧米に重心を置くというイメージで、各エリアでそれぞれの目的に応じたビジネスモデルと、パートナーシップの構築を目指したとのこと。
現状、アニメの多くは日本市場を必須とするが、爆丸は海外販売を中心に据えるという異例の戦略を採ったことになる。実際、国内では必ずしも知名度が高いとは言えない爆丸だが、北米からのロイヤリティ収入は大きなものになっている。
杉本氏は、企画力では日本が群を抜いているとしながらも、北米市場を絶対に押さえなければならない、つまり北米の子供たちに受け入れられるトイニメーションを作ることが必須と強調し、そのためには「放送」が重要だと説く。
(ポケモンなどの実績はあるにせよ)日本のアニメだからといって必ずしも放送されるとは限らない実状がある以上、その解決のためにもビジネスパートナーの協力が欠かせない、というわけだ。
北米の場合、いわゆる3大ネットワークに番組がかからないと、結果的に子供たちにリーチできない。爆丸の場合は、米国でのビジネスパートナーの1つであるCartoon Networkに放送権だけでなく諸権利まで販売することによって、彼らのモチベーションを高めつつ展開することができた、という事例を紹介した。
海外キャラビズのインフラが必要
2つめの講演は、株式会社ブシロードの手塚要氏による「キャラビズの海外展開について」。
1997年に株式会社ブロッコリー入社以来、約15年間キャラクタービジネスに関わり続けてきた手塚氏が強調するのは「市場の成長にはキャラクタービジネスのインフラが必要」という点だ。
まず手塚氏は、「日本にはキャラクタービジネスを展開するためのインフラが整備されている。しかし、北米には未構築」と指摘。2000年代に日本のキャラクタービジネス市場がある程度持ちこたえ、現在は回復傾向のように見えるにも関わらず、北米市場が「崩壊」したままである理由もそこに原因があると分析する。
それに対してブシロードの場合、すでにカードゲームのインフラが存在したため、その影響は小さかったという。北米では、1990年に登場したMagic: The Gatheringを皮切りに、遊戯王、ポケモンと10年間にわたってカードゲームを通じたキャラビズのインフラが構築されていた。
もっとも、販売機能だけではインフラとは言えず、専門店ユーザーとメーカーの間に、単なる販売以上の各種機能が存在してこそ、キャラクタービジネスの成長は見込めるという。アニメもキャラクタービジネスの一環として考えられ、北米は未整備だったと手塚氏は指摘する。
それを踏まえ、「北米のユーザーはアニメにお金に払わないのではなく、使う場面が無いのでは?」と手塚氏。ビジネスだけでなく、文化の輸出という側面を持つキャラクタービジネスの海外展開においては、コンテンツだけでなくインフラの整備も見据えた輸出の枠組みが必要ではないか、と強調して講演を終えた。