ミドル~ローエンドには謎の多いGeForce 500世代
GF114の下のグレードが「GF116」コアだが、実はこれがそもそも非常に怪しい。2011年3月にリリースされた「GeForce GTX 550 Ti」が、公式には「GF116-400」なるコアを搭載しているのだが、これは本来のGF116コアよりも、大分シェーダー数が多い不思議なコアである。恐らくこのGF116-400の実体はGF114なのではないかと筆者は想像しているが、正確なところは不明である。
GeForce GTX 550 Tiの下位には「GeForce GTX 545」があるが、こちらは「GeForce GTX 545 GDDR5」と「GeForce GTX 545 DDR3」の2製品があり、GDDR5はOEM向けである。
そのさらに下はエントリー向けであるが、ここには「GeForce GT 510/520/530」の3種4製品がラインナップされた。GeForce GT 510/530は完全にOEM向けで、GeForce GT 520のみOEM向けとリテール向けが用意されていた。ただローエンド製品のため、性能面で差をつけることに意味はないと判断したようで、実態はほとんど差がない。
厳密に言えば、メモリーの速度がリテール向けは1800MHzで、OEM向けは最大1796MHzではあるが、これはほぼ同一と考えていいだろう。またリテール向けは搭載メモリー量が1GBのみなのに対して、OEM向けには1GBと2GBの構成が用意されている。
疑問が残るのはそのコアである。GeForce GT 530は「GF118」、GeForce GT 510/520は「GF119」コアとされているのだが、OEM専用のローエンド向けに、わざわざ2種類のコアを作り分けるのか? というのがその疑問である。このGF118に関しては、「第1世代Fermiの『GF108』を、名前だけ変えたものではないのか?」という話もある。GF100世代は、特にハイエンドで消費電力が非常に多くて苦しんだが、ローエンドはそもそもそれほど高速動作させるわけではないから、消費電力の問題はそれほどクリティカルではない。正直なところはわからないが、ありそうな話ではある。そんなわけで、図では両方を併記した。
2012年の「Kepler」は
2年ぶりのメジャーアップデートか?
ここからは28nm世代の話となる。AMDはなかばむりやりに「Radeon HD 7970」を2011年中に発表したが、実際の出荷は2012年になってからなので、実質的には2012年スタートということになる。NVIDIAはそこまで無茶はせず、出荷可能になったタイミングで発表するもようだ。それが普通だろう。
それはともかく。「TSMCの28nmプロセスの歩留まりが上がらない」という話は、前回も紹介したとおりだが、これは同じTSMCを使うNVIDIAにも当てはまる。そのためNVIDIAは28nm世代に関して、ダイサイズが大きくて歩留まりが上がりにくいハイエンドではなく、ややダイサイズが小さく歩留まりを上げやすいミドルレンジを、先行して投入することにしたようだ。
この28nm世代で、NVIDIAは「Kepler」という新しいアーキテクチャーを投入する。AMDは従来の「VLIW 4」から「GCN」にアーキテクチャーを変更して性能を60%向上するという話をしているが、NVIDIAはKeplerの性能を「Fermiの1.5~2倍」と説明している。この比較の基準がよくわからないのだが、プロセス微細化だけではここまでの性能差は出ないので、こちらもアーキテクチャーのマイナーチェンジではなく、メジャーチェンジだと判断すべきだろう。ただ今のところ、Keplerの内部構造の詳細は明らかにされていない。
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